平成24年度は、免疫系で抗原提示に重要な役割を果たしている主要組織適合遺伝子複合体MHCクラスIが海馬シナプスに存在し、入力依存性シナプス非対称性の発現に必須であることが明らかになった。MHCクラスIは従来中枢神経系にはない、とされてきたが、一部のグループから視覚系の神経回路発達に重要な役割を持っていることが報告されていた。MHCクラスIの細胞膜上への輸送に必須のbeta microglobulinを欠損している遺伝子変異マウスでは、海馬シナプスのGluN2Bサブユニットの配置やシナプスサイズ、形態の左右差が消失していた。また、新規環境の探索によって右側海馬歯状回優位にc-fosが発現することを見出したが、この左右非対称性は、同じく海馬シナプス左右差を欠損しているiv変異マウスでは保たれているものの、beta microglobulin欠損マウスでは消失していることが明らかになった。このことは、iv以外にも脳の左右差を規定する遺伝子要因が存在し、それもMHCクラスIを介して非対称性を発現していることを示唆している。以上の結果は二報の論文にまとめ、投稿中である。
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