研究概要 |
ポリグルタミン病の転写異常病態に関して、これまで報告されている転写因子の凝集体へのsequestration仮説に関しては矛盾した報告があり、解決を見ていない。本研究では当研究グループが同定したNF-YA、FUS/TLS等の凝集体結合転写関連因子の病態への関与について、これらの分子のノックアウトマウスを用いて検討、また転写異常の中でも早期の変化を引き起こす、sodium channel beta4 subunitについても新たに作成したノックアウトマウスを用いてその病態への影響を解析し、以下の結果を得た。 1)NF-YAのコンディショナルノックアウトマウスを解析した結果、大脳皮質神経細胞におけるノックアウトによって、ユビキチン、P62の集積を伴う神経変性を引き起こすことが判明した。そのchip on chip解析によって、NF-YAの標的遺伝子を解析したところ、小胞体関連遺伝子が多く認められることが判明した。ノックアウトに伴う神経変性においてもGrp94の減少を伴い、小胞体の形態異常が引き起こされており、成熟神経細胞において、NF-YAが重要な役割を果たしていることが判明した。 2)FUS/TLSのヘテロノックアウトマウスとR6/2,SBMAマウスとの掛け合わせ実験からR6/2との掛け合わせでヘテロノックアウトにおいて、症状の増悪をみた。一方SBMAにおいては著変を認めず、ポリグルタミン凝集との関連では、遺伝子産物によって影響が異なることが判明した。 3)sodium channel beta4 subunitノックアウトマウスの解析では症状として振戦を認め、線条体中型有棘神経細胞のチャンネル機能にも異常を認めた。 以上これらのノックアウトマウスの解析から、これらの個々の因子が病態に異なる影響を与えている可能性が示唆された。
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