研究課題/領域番号 |
22240040
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
五十嵐 道弘 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50193173)
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キーワード | 成長円錐 / GAP-43 / 神経極性形成 / 軸索再生 / 遺伝子改変マウス |
研究概要 |
1)nGAPsのうち、GPSN2,PACS1の遺伝子欠損マウス作成に成功した。解析を24年度に行うべく、準備を行った。 2)成長円錐に関する極性形成機構を解析し、GPM6aがラミニン依存性にまず成長円錐に濃縮され、次いでその結合タンパク質であるRUFY3,rap2が濃縮されて、この3者の複合体が形成されることが神経細胞の極性決定における最初の事象であることを明らかにした。これらの濃縮は成長円錐における他の極性決定因子に先行して生ずることを証明した。 3)コンドロイチン硫酸(CS)の合成酵素GT-1の遺伝子改変マウスGT-1KOを用いて脊髄損傷実験を行ったところ、対照群に比べて機能的にも組織学的にも回復が著しいことを証明した。この際に、再生軸索の数は圧倒的に増大していた。この結果は欠損マウスだけでなく、in vivo RNAiでこの酵素の活性を低下させたマウスでもほぼ同様に起こった。GT-1KOではCS合成の減少のほか、グリア瘢痕の大きさも有意に減少していた。一方、アイソフォームであるGT-2の欠損では全く改善がなかった。 4)GAP-43のリン酸化のうち、新規に見出したリン酸化部位に関して特異抗体を作成したところ、培養系では成長円錐のみが強く染まり、in vivoでは損傷後に再生する末梢神経の再生軸索のみが選択的に認識されることが分かった。この結果から、当該のリン酸化は神経の成長・再生に密接に関係することが証明された。 5)成長円錐内の小胞の挙動をライブイメージングで解析した結果、SCAMP1で標識される小胞が方向性とそのスピードから、少なくとも3種類の異なる動き方をもつことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに予定した遺伝子改変マウスの作成に成功しており、成育や維持も順調である。リン酸化抗体の作成も順調で、これを用いた最初の論文が発表できた。また脊髄損傷に関する実験も進展しており、論文投稿中である。極性形成に関する研究は、予想以上の新しい発見があり、まとめるには若干のデータの追加が必要であるが、研究の価値は大きくなった。小胞の運動に関するライブイメージングもここ数カ月で急速に進展し、おおむね順調であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では順調に進んでいるので、特段の計画変更は予定していない。但し、24年度中に所属研究機関において、動物実験施設の改修工事が予定されているため、飼育可能な遺伝子改変マウスの頭数が制限される可能性が高い。それに対しては、実験の前倒し、他研究機関との共同研究などを通じて、支障がないように図る予定である。
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