研究課題
脳の発達の最終段階において神経回路の再編成が観察される。発達期および障害回復期の脳機能の変化はシナプス結合の変化伴う機能ネットワーク自体の変化に起因していることが示唆される。その変化は1)シナプス伝達の変化、2)ネットワーク(配線)の変化によって引き起こされる。申請者はin vivo 2光子励起観察の技術改良を行い、マウス大脳皮質において、世界トップクラスの深部到達度と解像度を達成する技術の構築を行った。さらに、同じ動物で同一微細構造の2ヶ月以上の長期繰り返しイメージング技術も構築し、中枢シナプス結合の可塑的長期変化の観察が可能となった。また、生直後の生きたマウスの大脳皮質イメージング法の確立も行った。この技術を発達期マウスの大脳皮質における細胞移動の生体観察に適用した。生後0-3日目のVGAT-VENUSマウスでは、辺縁部(marginal zone)におけるGABA作動性ニューロンのmulti-directionalmigrationが観察された。その移動総度はGABA受容体阻害剤やC1トランスポーター阻害剤(Bumetanide)の投与によって大きく抑制された。また、これらの細胞内Cl濃度は正常成熟マウスにおける神経細胞と比較し脱分極側にシフトしていることが電気生理学的手法により確認された。この結果から、移動中GABA神経細胞は細胞外GABAにより移動が助長されていることが判明した。また、技術的には、大脳皮質実質にカニューレを慢性装着させて、海馬のCA1神経細胞およびその突起たシナプス構造の長期生体内観察技術の構築を行った。
2: おおむね順調に進展している
シナプスの生体内長期観察技術の構築はすでに完成しており、脳内深部の海馬長期イメージング技術も程完成している。耐震工事のため、研究室の全面的な移動があり、遅延が予測されたが、概ね順調に進んでいる。
耐震工事による2度目の全面的な移動により、研究期間が十分にとれない可能性が予測されるが、シナプス再編に係わるミクログリアの分子メカニズムの関与について、分担研究者の追加などを行うことも計画している。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (11件)
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