研究課題/領域番号 |
22240044
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
澁木 克栄 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40146163)
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キーワード | マクロ共焦点顕微鏡 / フラビン蛋白蛍光 / 大脳皮質層構造 / 単一細胞イメージング / 体性感覚野 / 視覚野 / ヘモグロビン / マウス |
研究概要 |
マクロ共焦点光学系と青色レーザーを用い、従来我々がCCDカメラを用いて解析してきたフラビン蛋白蛍光シグナルが記録できるかどうか検証した。CCDカメラを用いた脳活動イメージングではZ軸方向の分解能が殆どない。従って、無数のニューロン像が重なった状態で捉えるため、単一ニューロンに由来する蛍光シグナルを分離することが不可能であった。マクロ共焦点光学系で解析を行ったところ、フラビン蛋白蛍光シグナルは全ての皮質の層から由来するという結果を得た。また光学的な倍率を上昇させていくと、単一ニューロンの細胞体に相当する大きさのスポットがフラビン蛋白蛍光シグナルを放つことが判った。これが単一神経細胞由来のシグナルかどうかを検証するため、単一ニューロンに由来する応答特異性の検証を行った。体性感覚野は刺激の始まりと終わりのみに応答するON-OFFニューロンと刺激の持続中応答する持続ニューロンとが存在する。CCDカメラを用いたイメージングでは、両者のニューロンタイプの信号を分離することは出来ないが、マクロ共焦点光学系で記録したスポット状の応答では、ON-OFFニューロンと持続ニューロンとを明確に区別することが出来た。また視覚野ニューロンを縞状のパターンで刺激する時、方位選択性を示すことが知られている。CCDカメラを用いたイメージングでは、方位選択性の有無は区別できないが、マクロ共焦点光学系を用いて記録したスポット状の応答では、明確な方位選択性を示すことが判った。近赤外線レーザーを用いた深部脳活動イメージングでは、レンズ面からの反射光によるニュートンリングが出現し、脳組織からの微弱な反射光と干渉して安定した脳機能イメージングが行えないことが判った。その対案として633ナノメータの赤色レーザーを用いると、深部脳活動を反映したヘモグロビン由来の内因性信号が記録できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来近赤外レーザー光を用いて、深部脳活動のイメージングを行うはずであったが、レンズ面からの反射によるニューンリングの干渉が激しく、うまく実行できていない。しかし633nmの赤色レーザーを用いたイメージング法が対案として使用可能であることが判った。青色レーザーを用いた単一ニューロンイメージングは計画にはなかったが、研究手段として有効であることが判った。これらの点において、本来の計画が一部修正されている。
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今後の研究の推進方策 |
深部脳活動のイメージングにおいては、単に実験的に可能であることを示すのみでなく、この方法を用いて有効な研究成果を挙げることができることを実証したい。そこで、大脳皮質感覚野へ感覚入力を送り込む視床活動を可視化することを具体的な目標とし、実験を行う。 単一ニューロン活動のイメージングにおいては、カルシウム色素を用いたイメージングと同一動物で実験し、両者の特性を比較検討することが必要である。この実験によって、単一ニューロン活動に由来する信号をより確実に同定すると同時に、マクロ共焦点顕微鏡を用いた本イメージング法のメリットを明確に示したい。
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