本研究はマクロ共焦点光学系を用いた深部脳活動イメージング法の開発を目的としている。まずどのような信号を用いれば脳活動がモニターできるか検討した。従来用いられてきた方法は、活動依存的な血流変化をヘモグロビンの吸光度変化として捉える方法である。この方法は光を照射し、脳組織からの反射光を測定することによって吸光度変化を可視化する。しかしマクロ共焦点光学系を用いる場合、レンズ面からの反射光によるニュートンリングが出現し、脳組織からの微弱な反射光と干渉して安定した脳機能イメージングが行えない。そこで血流変化を蛍光シグナルとして記録することを行った。まず633ナノメータのHeNeレーザーを励起光として用い、血流中のアルブミンをAlexa Fluoro 633で標識して活動依存的な変化を解析した。その結果、視覚刺激に応じる変化率2%程度の信号を、視覚野領域及び脳表から約2.5ミリの深さにある外側膝状体領域から記録することに成功した。血流を蛍光信号としてモニターする他の方法を検討するため、赤血球膜を脂溶性色素のDiDで標識する方法も試みた。その結果、活動依存的な蛍光信号の変化率が約6%程度と大きくなることが判った。アルブミンと赤血球をラベルした場合に異なる振幅の信号変化率が観察される原因として、細動脈から毛細血管にかけて、活動依存的なヘマトクリットの変化が起きているたと思われる。即ち、赤血球は毛細血管の内径に近い大きさを有するため、毛細血管での流速が血漿成分のアルブミンより遅くなる分へマットクリットが上昇する。脳活動によって血流が増加するとき、ヘマトクリットも同時に上昇するため、活動依存的な変化が蛍光アルブミンで観察した時より蛍光赤血球で観察した方が大きくなると思われる。今後DiDよりさらに長波長側で働く蛍光色素で赤血球を標識し、深部脳活動イメージングの効率をより高める予定である。
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