研究課題
経頭蓋直流電気刺激法(Transcranial Direct Current Stimulation: tDCS) は、刺激パラメータにより直下の神経活動を抑制または促進することが知られている。本研究は、tDCSを用いて運動関連脳領野が認知機能に果たす役割を明らかにすると同時に、非侵襲脳刺激法をもちいた認知機能促進手法を確立し、さまざまな認知障害に対する新しい認知リハビリテーションを開発することを目的とする。計算課題の成績が,左右頭頂葉の頭頂間溝周囲を陽極または陰極をもちいたtDCSによって刺激をしたときに改善するかどうかを検討した。その結果,左頭頂葉を陽極で、右頭頂葉を陰極で刺激したときに,有意に計算の反応速度が増加することがあきらかになった.この効果は,左頭頂葉を陰極で,右頭頂葉を陽極で刺激したときには全く認められなかった.また,tDCSによる成績改善の効果は,事前に同じ計算課題をもちいて実施したfMRIにおける頭頂葉の活性化程度の左右差によって統計的有意に推定可能であることを示した.以上の知見を論文として発表した.また,tDCSは極性依存的に刺激電極直下の皮質細胞膜内外の電位を変化させることにより,運動認知機能や学習に影響を及ぼすと考えられており,加齢やさまざまな神経・精神疾患における運動•認知機能低下に対する補強手段として注目されている.我々は,tDCSのパーキンソン病症状に対する効果発現メカニズムを明らかにすることを目的としてin vivo microdialysis を用いた検討を行った.その結果,ラットの皮質へ頭皮上から陰極 tDCS を印加することにより,線条体細胞外ドパミン濃度が増加することを明らかにした.以上の知見を論文発表した.また、パーキンソンモデルラットを作出し、tDCSの効果に関する行動学的検討とPETを用いた検討を開始した。
2: おおむね順調に進展している
ヒトを対象とした検討、ラットを対象とした検討のいずれも、研究成果が論文として採択され、順調に成果をあげつつある。一方、PETを用いた検討については、当初計画通りに進まなかったため、平成27年度に一部研究費を繰り越し継続して実施することとした。
ラットをもちいた経頭蓋直流電気刺激の作用機序の解明:経頭蓋直流電気刺激をラットの大脳皮質に与えた場合の、皮質におけるMulti Unit Activityの変化、ならびに単一ニューロンの発火頻度の変化を明らかにする。パーキンソンモデル動物の作出:これまでに明らかにしたtDCSの基底核遊離ドーパミン増加効果が、パーキンソン病の病態に及ぼす影響を明らかにするため、パーキンソンモデルラットを用いて、経頭蓋直流電気刺激が運動機能に及ぼす影響を評価するとともに、PETをもちいてtDCSによるドーパミン遊離の非侵襲的計測を実施する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件)
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