研究課題
本研究は、網膜→上丘→視床枕→扁桃体等からなる膝状体外視覚系(皮質下領域)の脳発達における役割を明らかにすることを目的とする。1.神経生理学的研究サル上丘および視床枕より社会的刺激に対するニューロン反応を記録した。その結果、視床枕ニューロンは顔様図形に最も早い潜時で応答し、潜時が遅くなるにつれて顔写真、顔様パターン、顔の線画、目様パターン、および単純図形などを範疇化することが明らかになった。また、本年度よりラットを用いて、上丘からニューロン活動を記録し、視覚的注意課題に対する応答性を解析する実験を開始した。2.皮質下領域の破壊による行動学的研究生後早期のサルの上丘を両側性に破壊し、社会行動を解析した。その結果、社会行動(アイコンタクト、他サルとの遊び様行動、社会的接触)が障害されることが明らかになった。3.皮質下領域の神経化学的研究ヒトの自閉症や統合失調症で異常が報告されている血小板由来増殖因子(PDGF)の受容体ノックアウトマウスを解析した。その結果、自閉症や統合失調症様の行動障害(社会行動、プレパルス抑制、場所学習、強制水泳、聴覚および文脈的恐怖条件付け)が明らかになった。さらに、同マウスではGABA系ニューロン(パルブアルブミン陽性ニューロン)が減少し、GABA系ニューロンの指標となるγオシレーションが障害されていることが判明した。4.社会行動による脳機能発達の神経機構ヒト乳幼児(3-9ヶ月齢)にアイコンタクト等の社会的刺激を呈示し、大脳皮質(とくに前頭極)の脳血行動態を、近赤外分光法(NIRS)を用いて記録・解析した。その結果、アイコンタクトにより前頭極の活動が増大することが判明した。また、社会行動を行っているサル内側前頭前野のニューロン活動を記録し、ミラーリングだけでなく、自己と他者の区別や他者の行動のモニタリングに関与することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りの予定で研究データが得られている(サルを用いた行動実験はほぼ終了した)。また、当初の計画にはなかったが、サル内側前頭前野のニューロン活動を解析した。一方、「3.皮質下領域の神経化学的研究」では、未だPDGFR-KOマウスの上丘を解析していないので、来年度に行うことにした。また、同マウスにおけるドレブリン解析については、他グループとの共同研究により、すでに他の方法でスパイン形成が障害されることが明らかにされつつあるため、行わないことにした。
1.来年度は、神経生理学的研究では、データ収集よりは、解析を中心に行う。サル扁桃体および視床枕ニューロンについては、本年度までの研究により解析を終了したため、来年度はとくに上丘ニューロンの応答性を解析していく。2.ドパミン系に関連した研究(前脳におけるドパミン放出における上丘の役割に関する研究、およびドパミン受容体ノックアウト動物における扁桃体および海馬体ニューロンの応答性の解析)を行い。皮質下系とドパミン系との関わりについて明らかにしていく。さらに、計画には入っていないが、ドパミン系に強く影響される側坐核ニューロンの応答性についても解析する。
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