研究課題
本研究は、網膜→上丘→視床枕→扁桃体等からなる膝状体外視覚系(皮質下領域)の脳発達における役割を明らかにすることを目的とする。神経生理学的研究では、これまでに記録したサル上丘ニューロン応答を集計し、多次元尺度法(MDS)を用いて解析した。その結果、最初の潜時25 msec以内において顔の低空間周波数成分に相当する顔様パターンを識別し、ついで25-75 msecにおいて顔の線画および目様パターンが識別されることが明らかになった。これら短潜時における反応は、上丘が顔情報の粗いが素早いbottom-up性の情報処理系に関与していることを示唆する。また、ラット上丘には、自閉症患者で障害される注意シフト課題で特異的に応答するニューロンが存在することが明らかになった。神経化学的研究では、ヒトの自閉症や統合失調症で異常が報告されている血小板由来増殖因子(PDGF)の受容体ノックアウトマウスの上丘において、パルブアルブミン陽性ニューロン(GABA系ニューロン)およびotx2陽性ニューロンが有意に減少していることが明らかになった。一方、自由行動下のドパミンD1およびD2受容体ノックアウトマウスの扁桃体および海馬体ニューロンを記録した結果、野生型マウスと比較して受容体特異的に報酬関連応答が消失している、また自由行動下のラット側坐核ニューロンには、性行動中の報酬行動に応答するニューロンが存在することなどが明らかとなった。さらに、ラットの上丘をビククリンにより化学的に刺激した結果、扁桃体、海馬体、側坐核、および前頭葉でドパミンおよびセロトニンが放出されることが明らかになった。以上から、皮質下領域は、社会的認知に関与するとともに、社会的認知に関与する大脳辺縁系各領野にドパミン等の神経伝達物質を送ることにより高次脳機能を支えていることが示唆された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 14件) 学会発表 (25件) 図書 (1件)
Eur. J. Neurosci.
巻: 37 ページ: 35-51
Psychophysiol.
巻: 50(1) ページ: 35-47
DOI: 10.1111/j.1469-8986.2012.01488.x.
BMC Neuroscience
巻: 14 ページ: 13
DOI: 10.1186/1471-2202-14-13.
Environ Health Insights
巻: 7 ページ: 1-14
DOI: 10.4137/EHI.S10346
J. Neurosci.
巻: 32(5) ページ: 1672-1686
Behavioral Brain Res
巻: 230 ページ: 48-61
PLoS One
巻: 7(10) ページ: e46970
Autonomic Neuroscience: Basic and Clinical
巻: 168 ページ: 88-92
DOI: 10.1016/j.autneu.2012.01.010.
J Biol Chem.
巻: 287(18) ページ: 14631-14643
DOI: 10.1074/jbc.M111.325456
Hippocampus
巻: 22(6) ページ: 1371-1378
DOI 10.1002/hipo.20973
巻: 7(7) ページ: e40273
Doi: 10.1371/journal.pone.0040273
Organohalogen Compounds
巻: 74 ページ: 1369-1372
巻: 74 ページ: 1332-1335
Reviews in the Neurosciences
巻: 23 ページ: 697-706
DOI: 10.1515/revneuro-2012-0055