研究課題
本研究は、移植免疫に関わる均質化した遺伝的背景、すなわち同一MHC遺伝子を持つカニクイザルとそれら個体のiPS細胞を樹立することによって、霊長類におけるiPS由来細胞の同系個体への実用的な移植検定系の確立を目指す。本年度は、1)サルMHC遺伝子のno免疫拒絶に関わる主要5遺伝子について、ハプロタイプをホモ接合体で持つ個体の探索、2)MHCホモ個体からのiPS細胞の樹立、3)樹立したサルiPS細胞株の幹細胞特性としての、発現遺伝子プロファイルの他、in vitroおよびin vivoでの多分化能の検証、および4)in vitroでの配偶子形成、についてそれぞれ検討した。1):フィリピン産カニクイザルで見出された、オス、メス各1頭のMHCホモ個体の内、オスの年齢が2歳と若いため、現地に出かけオス精子の採取後凍結保存し日本への輸送を試みた。その結果、直腸法で精子の採取には成功したが、量が少なく移送手続が3月に遅れ、今後急ぎ授精能の確認を行う予定である。2)と3):MHCホモのメスとオスの皮膚細胞に、山中4因子をレトロウィルス法で導入した結果、何れにおいても扁平なiPS細胞のコロニー形成を見出した。ただ、オスでは多能性が乏しいが継代は比較的容易であったが、メスではteratomaを確認し十分な多能性を確認できたが継代が非常に困難であることが分かった。またセンダイウイルスベクター法によるiPS細胞樹立を試みたが、樹立には至らなかった。4):サルiPS細胞のin vitro胚様体分化課程における生殖細胞/配偶子分化を可視化するため、ヒトVASA(生殖細胞特異的発現)-GFP/Tomatoレポーター遺伝子を構築したiPS細胞株を樹立した結果、in vitro分化系において分化1週目からGFP/Tomato陽性細胞の出現が観察され、2週目以降には卵子様細胞の形成が見出された。
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Genes Dev.
巻: 24 ページ: 887-892
Mol Reprod Dev
巻: 27 ページ: 802-811
http://www.shiga-med.ac.jp/~hqanimal/