研究概要 |
前年度までの研究で確立された動的流れ場での培養技術,非拘束圧縮培養技術に加え,本年度では拘束圧縮培養技術を確立し,ウシ軟骨細胞から構成される3次元組織をこれらの動的な培養環境下で培養を行い,軟骨組織の形成を多角的に検証した.これらの動的培養法において,プロテオグリカンおよびコラーゲン産生量では動的流れ場での培養と非拘束圧縮培養では有意差は見られなかったが,拘束圧縮培養においてはそれらの産生量が低下していた.これは拘束圧縮培養においては組織の側方が拘束され,酸素供給・拡散が妨げられるために,軟骨細胞のバイアビリティに影響を及ぼしたものと考えられる.一方,生体組織の持つ階層構造という観点からは差が見られた.生体軟骨組織においては,細胞の形態等から表層,中間層,深層の3層に分けることのできる階層構造を構築しており,各層において軟骨細胞のフェノタイプや組織の力学的特性が異なることが知られている.3種類の動的培養を実施したところ,いずれも異方性を有した組織が構築された.その中で,拘束圧縮培養において形成された軟骨組織は,生体軟骨と類似した階層構造を形成することが示された.拘束圧縮培養においては,圧縮による側方にひずみが生ずることがブロックされており,そのことにより組織内部の静水圧が上昇していることが推察される.これらの条件は生体の関節軟骨が圧縮を受ける場合の力学的な環境に近いため,より生理的な力学的環境を生む動的培養法であると考えられる.今後は,より明確な階層構造の実現に向けて動的培養条件の検証を続けていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
軟骨組織創製のための動的培養技術の開発において,中心壊死を起こさず,かつ異方性を有する3次元組織を形成させる技術の開発が予定通り進んでいる.今後は,研究計画に示されるように,再生組織の外形形状の制御を可能とする技術の開発を進める.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,動的培養技術と再生組織形状制御技術の開発を主な目標としている.一方,細胞ソースとしては成熟した軟骨細胞を用いて研究を進めている.今後,これらの技術の開発が進んだ折には,細胞ソースとして未分化な細胞に動的培養技術と再生組織形状制御技術を適用して行く予定である.
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