研究課題
前年度までに条件設定を終えた動的流れ場での培養技術を、今年度はiPS細胞に適用した。増殖因子を用いてヒトiPS細胞から軟骨様細胞に分化させた細胞を二次元培養により増殖させた後、細胞懸濁液を作製しクローニングリングを用いて積層培養した。1日後、そのまま静置培養を続けるグループと動的培養を行うグループに分けて6日間培養し、組織形成度の評価を行った。その結果,遺伝子発現レベルにおいても、コラーゲンtype I、コラーゲン type IIおよび転写因子Sox9共に動的培養により増加していることが示された。また、力学的強度、マトリックス産生(コラーゲン,プロテオグリカン)はいずれも旋回培養という動的な培養により増加することが示された。一方、組織形成という点においては、ヒトiPSから軟骨細胞様細胞に分化させた細胞を用いた場合は、ブタ関節軟骨細胞を用いた場合と比較して、中心壊死を起こす確率が高く、確実に組織形成ができるかどうかという点においては劣っていた。これは、用いたヒトiPSから軟骨細胞様細胞に分化させた細胞が、軟骨細胞と同等の低酸素要求性および低栄養要求性を実現出来ていないことによると考えられた。したがって、これまでに確立した動的培養の条件およびシステムを改良し、組織内部の細胞に対する酸素供給および栄養供給をさらに増加させる必要があると考えられた。今後は、動的培養の条件を改良し、成熟軟骨細胞のみならず未分化細胞にも同等に適用可能な三次元組織構築技術の開発を目指す。
2: おおむね順調に進展している
これまでに開発した動的培養技術を用いて、成熟軟骨細胞だけでなくiSP細胞から軟骨様細胞に分化させた細胞を用いて、関節軟骨細胞への分化コントロール、マトリックス産生を実現することができた。そして一定の確率で3次元組織化を実現することができた.
今後は、より確実な三次元組織再構築を実現するために、酸素供給および栄養供給の効率化を進め、動的培養条件を検証する。また、組織エレメントから3次元組織を構築するコンセプトをさらに進め、ヒアルロン酸等の細胞外マトリックスと複合させることにより、より迅速に再生組織の力学的特性を向上させ、同時に軟骨細胞のフェノタイプの維持を図ることのできる方法を検証する。
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