有機金属気相成長法によりSi基板上に成長した単結晶CdTe厚膜層を用いた、p-like CdTe/n-CdTe/n^+-Si構造のヘテロ接合型ダイオード検出器について、1.検出器性能の改善と、2.この検出器による8×8の2次元アレイ型画像検出器の製作と特性評価を実施した。 1.に関しては常温動作時における検出器暗電流の低減が最大の課題であり、Si基板とCdTe層との格子不整合に起因する、n-CdTe層中の転位密度の低減が必要である。本年度はn-CdTe層成長時に実施する、n-CdTe層アニール方法とその条件を検討し最適化を行った。その結果従来と比較して大幅な暗電流の低減を達成できた。またアニール条件の最適化により成長層の結晶性と面内均一性の向上や、成長層の基板からの剥離防止も達成でき、検出器アレイの実現に向けて大きな進展が得られた。 2.に関しては、1.で述べたアニールを用いて成長したCdTe層をダイシングにより素子分離してアレイを製作し、その電気特性及び検出特性の評価を行った。アレイ製作技術として、CdTe成長層のSi基板からの剥離や、検出器電気特性の劣化を防止できるダイシング方法と条件を確立した。さらに製作したアレイと、信号取り出し回路及び検出特性評価用セラミックパッケージとの実装技術も確立した。これら開発した技術を用いて8x8の検出器アレイを試作しその電気特性評価を実施した。以上の結果、上記の製作技術がアレイ製作に十分な実用性を有することが確認できた。 1.及び2.によって製作したアレイ型検出器を、本年度導入した温度可変プローバー装置及び測定システムを用いて、暗電流の成長面内分布とその温度依存性を評価した。その結果、暗電流は成長時における成長表面での原料分解比率に依存することを見いだした。この結果は今後の検出特性の改善に極めて重要な知見であり、次年度以降の特性改善に活用する。
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