研究課題/領域番号 |
22240063
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
椎名 毅 京都大学, 医学研究科, 教授 (40192603)
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研究分担者 |
山川 誠 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60344876)
戸井 雅和 京都大学, 医学研究科, 教授 (10207516)
新田 尚隆 独立行政法人産業技術総合研究所, 研究員, 研究員 (60392643)
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キーワード | 可視化 / 計測工学 / 生物・生体工学 / 医療・福祉 / 癌 |
研究概要 |
光音響イメージングは、適当な空間分解能と測定深度をもち、光吸収の大きい血管等を高コントラストで観察可能なものとして期待されているが、現在の手法は、近赤外パルス光の照射法や、光吸収で生ずる超音波の受信法の何れも単純で、生体から診断情報を十分に引き出せていない。本研究では、上記の観点から光計測と超音波技術を、より高度に融合させた高機能な光音響イメージング法を開発する。さらに、基礎実験システムを構築して臨床応用についての基礎的検討を進めることを目的とする。 まず、超音波信号の光パルス変調による高機能化について、昨年度はGold符号を用いた符号化光音響信号から、パルス圧縮とSN向上を図る方法を検討したが、本年度は、さらに、ファントムを用いたイメージングを試みた。その結果、符号化を行わない場合、信号のSNの低下により画像化が困難な深部においても、符号化パルス光によるレーザー照射では鮮明な画像が得られることが確認できた。 次に、光音響イメージングの高機能化として、酸素飽和度や組織性状の違いを画像化する符号化マルチスペクトル光音響イメージング法について検討した。吸光スペクトルを得る場合、通常は、波長の異なるレーザー光での複数回の照射が必要であるが、本研究では、波長の異なる2つの符号化パルス光を同時照射して、得られる光音響信号からそれぞれの波長に対する光音響信号を分離する方法を検討した。波長により特性の異なる吸収体を含むファントムによる実験では、単独で照射した際に得られるものと同等の光音響信号が分離でき、その結果、高速で吸収特性の違いが画像化可能なことが示された。 また、光音響信号の空間変調による高機能化については、光吸収体の2次元変位ベクトルを得るために、開口変調法を用いる手法について検討し、シミュレーションとファントム実験により、変位分布の画像化が可能なことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、高機能光音響イメージングの要素技術の開発を目的として取り組んだ。シミュレーション解析での検討に加え、複数波長での同時照射が可能なレーザーシステムや、各エレメント独立に超音波信号の処理が可能な基礎実験システムを構築して、ファントム実験による有効性の検証を行った。当初、予定していたマウス等による動物実験は、より高出力のレーザーが必要とされたため実施でできなかったが、ほぼ当初の計画に沿って進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、これまで開発した高機能光音響イメージングのための要素技術をもとに、さらに散乱や減衰、不均一性の高い生体組織での計測に対応するための信号処理、画像構成法の開発を試み、さらにいくつかの臨床応用の可能性についても検討を進める。
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