本研究では、アスリートの緊張状態におけるパフォーマンス崩壊の脳内メカニズムについて具体的には以下の点について検討した。 (1)パフォーマンス崩壊時の基本的なモデルの作成:パフォーマンス崩壊時にどのような心理的要因が関係しているかを調べるために、パフォーマンス崩壊に関する質問紙の作成を試みた。質問紙の作成では、各質問項目を検討するためにこれまでの先行研究等から、パフォーマンス崩壊と関連する記述を抽出し、候補となる質問項目の作成を行った。 (2)モーションキャプチャシステムによるパフォーマンス崩壊時の運動に対する力学的分析:パフォーマンス崩壊時には、具体的に人間の身体のどの部位のどの様な動作、また同様に認知的な活動も崩壊をするかを同定するために、モーションキャプチャを用いた実験を行うことを目的とした。本年度は、課題の作成およびプログラミングに重点をおき、どのような課題が適切か検討を行った。その結果、テニスのサーブ場面を対象とし、テニス・サーブ予測課題を用いることとした。実験課題はソフトウエアで操作し、テニス・サーブの動画(センター方向へのサーブの動画とクロス方向へのサーブの動画)を実験者の意図で選択できるようにし、被験者が動画の呈示された一部分を見て打球の方向を予測するようにした。実験の難易度は動画の呈示時間で任意に捜査できるようにし、各イベント(動画の開始・終了、運動反応時など)で分析のために5VのTTL信号を送信するようプログラムを作成した。 (3)パフォーマンス崩壊時の脳活動の測定および公開型脳機能施設の構築:本年度は、課題の作成及び公開するための実験・分析テンプレートを開発した。実験分析テンプレートは、分析ソフトMATLAB及びSPMを用いて未経験のスポーツ科学者が容易にfMRI研究を行えるよう自動分析のシステムを構築した。
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