研究課題
老化ならびに発育障害やスポーツ活動中の不慮の事故等による骨格筋線維の萎縮や機能低下は、Quality of Lifeの著しい低下を招く。さらに骨格筋の機能低下は活動量を抑制し、骨塩量の低下や動脈硬化性疾病など個人の健康維持に問題であるばかりでなく、国民総医療費の増大につながる。したがって、予防介護の観点からも、骨格筋線維の萎縮や機能低下を抑制することは重要なテーマであるとともに、健康・スポーツ領域においても、骨格筋量や機能の維持・向上は重要な課題である。本研究では、骨格筋量および機能の維持・向上における組織幹細胞を中心とした骨格筋再構築ネットワークの解明を目的とする。本研究は4年計画で実施され、本年度はその3年目に当たる。機能的代償性肥大に伴いTRIM72はmRNAレベルで増加するものの、タンパク質レベルでは顕著な変化は認められなかった。一方、caveolin-3(Cav-3)は逆に肥大に伴うタンパクの減少が観察された。萎縮からの再成長過程では、TRIM72およびCav-3共に発現量の増加がタンパクレベルで確認された。アンギオポエチンの発現量は、萎縮により低下し、その後の再成長により増加することがmRNAおよびタンパクレベルで認められた。また、骨格筋の再成長時にフォリスタチンタンパク質の発現増加が観察された。マイクロRNA(miRNA-1、133b、206および208b)発現量は、筋萎縮に伴い減少し、その後の再成長に伴い増加した。したがって、骨格量の低下に伴い細胞間コミュニケーション分子の発現量が低下するものの、骨格筋量増加の際にはベースラインによりその応答は異なるものであった。今後、骨格筋再構築ネットワークに係る分子間ならびに細胞間シグナルにおける細胞内シグナル伝達分子の検討を推進し、組織幹細胞を中心とした骨格筋再構築ネットワークの解明を目指す。
2: おおむね順調に進展している
本研究は4年計画で実施され、平成24年度で3年間の研究が終了した。これまで、骨格筋再構築ネットワークに係る分子について、骨格筋可塑性発現に伴うmiRNAsおよび細胞間コミュニケーション分子であるTrim72(ミツグミン53)の発現変化、骨格筋細胞膜特異的タンパク質であるcaveolin-3、血管系とのコミュニケーションを担うと考えられるアンギオポエチン、follistatinやミオスタチンの機能、細胞内シグナル伝達物質としてAktおよびp70S6K、そして骨格筋遺伝子発現を調節するマイクロRNAに関するデータが得られている。したがって、当初の研究目的はおおむね順調に達成されていると判断している。
4年間の本研究計画は順調に推移し、次年度はいよいよ最終年度を迎えるが、最終目的を達成するために順調に研究成果が得られているものと考えている。したがって、特に計画を変更する予定はない。今後、骨格筋再構築ネットワークに係る細胞間シグナル(アンギオポエチンおよびアデォイポネクチン)発現とmiRNAsならびに細胞内シグナル伝達分子の相互作用の検討を推進することで、骨格筋量および機能の維持・向上における組織幹細胞を中心とした骨格筋再構築ネットワークの解明を目指す。
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