研究概要 |
世界レベルの瞬発系運動選手の全ゲノムに存在する一塩基多型(SNPs)を対象とした網羅的な関連解析を開始した。最初にジャマイカの短距離選手群48人と対照群48人のDNAをIllumina社のHuman 660W-Quad BeadChipを用いて約60万個のSNPsを解析した。660Wチップで分析可能なSNPは主としてヨーロッパ人とアジア人の多型であった。そこで、ジャマイカの短距離選手群8人と対照群8人ならびに米国の短距離選手群48人と対照群48人のDNAをOmini1 BeadChipで分析した。Omini1は約100万個のSNPsを分析できるチップであり、アフリカ人の分析にも適している。660WとOmini1によって得られたSNPsデータをソフトウエアPLINKによって統合し解析した。Call rate<95%,MAF<0.1,HWEp<5.0E-5のSNPsを選択した。タイピング不良の試料を除外し、660Wで分析した69検体とOmni1で分析した89検体を選択し、Hapmap Phase3の988人を比較対照として集団構造を分析した。10個の固有ベクターで補正した後の29万個のSNPsを用いてManhattan plotを得た。その結果、第1染色体長腕と第2染色体長腕にそれぞれ5.0E-05以下のp値を示すSNP各1個を検出したが、全ゲノム解析において有意と考えられる5.0E-08以下のp値を示すSNPは検出されなかった。このため、さらに288人のDNAをOmniExpressによって分析することにした。一方、一般集団では極めて頻度の低い多様性が世界レベルの瞬発系運動選手が有する類い稀な運動能力に関与している可能性を考慮し、全エクソン解析を開始した。
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