研究課題
多くの運動疫学研究では、経時的変化を独立変数とした疫学研究は殆ど報告されていない。そこで平成26年度も、各種のヘルアウトカムに及ぼす多点観察された体力および身体活動・座位行動(客観的評価含む)の影響に関して引き続き検討した。久山町研究では、握力の経年変化が心血管病の発症に与える影響に関して19年間追跡した結果、握力の経年低下は心血管病発症の有意な危険因子でなかった。これらより、握力の経年変化は心血管病による生命予後に影響する因子であるが、心血管病発症に与える影響は弱い可能性がある。また、握力の経年変化が心血管病の有意な危険因子ではなかった理由のひとつに、対象集団の数が比較的少なかったことも考えられた。高齢者研究では、2年間隔で調査された高齢者の客観的に評価された曝露指標(強度別の活動量と座位時間調査)とうつ症状(CES-Dで評価)、認知機能(Five-cogテストで評価)との関連性を縦断的に検討した。その結果、認知機能に対する体力および身体活動量の変化の影響を検討した結果、女性にのみ椅子立ち上がり回数が増えること、および歩・走行以外の低強度活動量が増加することが認知機能の維持・向上に正の関連を示した。しかし、座位時間については認知機能低下との関連性は認められなかった。うつ症状に関しては、女性で運動習慣を継続していた群では、そうでない群よりも良好な体力を保っていた。さらに、継続して運動習慣なし/非継続群では、運動習慣継続群と比べ,うつ症状の保有率が約3.8倍であったことから,運動習慣の継続によって下肢の運動機能を良好に保つことが、うつ症状の抑制と関連する可能性が推察された。当該年度を含めた5年間の研究成績から、今後は身体活動・不活動および座位行動などの曝露指標の変化に基づいた運動疫学研究の必要性が示唆された。そのためには、質の高いコホート作成が重要であると考えられた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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