研究課題/領域番号 |
22240079
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
寺澤 孝文 岡山大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (90272145)
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研究分担者 |
太田 信夫 学習院大学, 文学部, 教授 (80032168)
山田 剛史 岡山大学, 大学院・教育学研究科, 准教授 (10334252)
吉田 哲也 常葉学園大学, 教育学部, 准教授 (70323235)
松田 憲 山口大學, 大学院・理工学研究科, 講師 (10422916)
鈴木 渉 宮城教育大学, 教育学部, 講師 (60549640)
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キーワード | 教育系心理学 / 教育工学 / 潜在記憶 / 可視化 / 因果推定法 / クラウド / 異種メディア通信 / 心の体温計 |
研究概要 |
本年度は、子どもの意識状態を定常的・縦断的に個別に測定する技術を確立した。すなわち、学校の各教室に、小型のスキャナ(ScanSnap)をデバイスサーバ(N-transfer)によりインターネット接続し(コンピュータ不要)、小学生が、自分のドリル用紙を「ワンプッシュ」でスキャンし、クラウドにアップするシステムを構築した。アップされた画像はOCR処理され、マイクロステップ技術によりスケジューリングされたデータベースに記録、解析され、成績の変化を個別フィードバックするサービスがほぼ自動化された。学校では、WEBストレージとの通信にフィルターを設定していることが多いが、フィルターを解除しセキュリティーを確保できることも確認できた。 実際に、抑うつ傾向、動機づけ尺度等、60項目を超える尺度項貝について3ヵ月間縦断的に反応を測定し、そのデータを研究者(将来的にはカウンセラーなど)へ自動送信することも可能になった。 学衛的知見としては、縦断データを解析した結果、抑うつ傾向の高低は個人差が大きいが、個人内変動は小さな子どもが多く、変動する子どもが少数であることが示された。従来から行なわれている横断的な意識調査では、ある時点で抑うつ傾向が測定されるため、抑うつ傾向が高い子どもに注意が向きがちであったが、上記事実は、変動をする子どもに注意を喚起する必要性を示唆する、これまでにない知見といえる。 e-learningシステムを再起動したが、一般の学校では自宅にネット環境がない子どもも多く、学校でそのシステムを導入することが難しいため、大学生を対象に支援を試行しつつシステムを改良していくため学生用のデータベース(教員採用試験問題など)を構築した。 記憶の長期持続性とマイクロステップの学習支援については、日本テスト学会と日本理論心理学会の年次大会の大会企画シンポジウムで大きくアピールすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
子どもの意識変化と子どもの周辺で起きているイベントの対応データベースを構築することを目的とした本研究では、恒常的に子どもの意識変動を収集するのかが最大の課題であり、最新の通信技術でそれが実現できたため。すなわち、子どもが教師の手を経ず自らのデータをアップし手元に残せ、純粋な子どもの気持ちに近いデータが収集でき、紙媒体のドリルでは最短の時間でデータの回収とフィードバックを実現でき、かつ教師の負担も最小とすることができる他、当初想定していた以上の理想的な状況が構築できたため。
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今後の研究の推進方策 |
抑うつ傾向が大きく変動する子どもが少数である新事実は想定外の事実であり、意識変動とイベントの対応から意味のある情報を抽出することを目指す本研究にとっては大きな問題どなる。つまり、抑うつ傾向を指標とした場合は、かなり多くの子どもを対象にデータを蓄積しないと意味のある推定は難しいことが示唆される。そこで、2つの新たな目的を設定する。その一つは、抑うつ傾向以外に様々な意識調査項目を入れ、変動の傾向が大きな尺度項目を特定すること、もう一つは意識調査の対象を大幅に増やす方法を確立することである。後者については、因果推定を行なうためのデータベースを構築する上では、意識の変動がいつ起きたのかを記録することは必須なため、当初はそれが記録されるe-learningシステムのみでそのデータを収集する予定であった。しかし、23年度、日常的に子ども自身がスキャナで反応データをクラウドにアップし、データを回収できるようになり、さらに読み取られたイメージデータ名にスキャン目時が記録されるため、原理的に紙メディアで反応日時を自動的に特定できる可能性がでてきた。そこで本年度は、クラウドにアップされたイメージデータからスキャン日時を読み敗りその目時を反応データとして記録するしくみを構築する。さらに、これまで保護者や教師にイベントの記録を依頼する計画であったが、子ども自身にイベントをごく簡単に報告してもらいイベントデータを収集する方法の確立を目指す。紙であれば子どもが手書きでイベントを報告することもでき、それを他者の手を経ず収集できる状況が23年度構築できたためである。
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