近現代の日本における医療の構造変化と歴史の重層

2012 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 22240081
• 研究機関: 慶應義塾大学
• 研究代表者: 鈴木 晃仁 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (80296730)
• 研究分担者: 杉田 米行 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (00216318) ; 杉田 聡 大分大学, 医学部, 教授 (00222050) ; 廣川 和花 大阪大学, 適塾記念センター, 准教授 (10513096) ; 脇村 孝平 大阪市立大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30230931) ; 加藤 茂生 早稲田大学, 人間科学学術院, 講師 (30328653) ; 橋本 明 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (40208442) ; 飯島 渉 青山学院大学, 文学部, 教授 (70221744)
• 研究期間 (年度): 2010-04-01 – 2013-03-31
• キーワード: 医学史 / 公衆衛生 / 精神医学 / ハンセン病 / 患者

研究概要

この研究の目的は、近代の日本において、疾病と医療者と患者という三つの要素からなる「医療の三角形」が、環境と社会の変化に応じてどのように転換したのかを明らかにすることである。また、その転換において、転換前に存在した三角形の構造がどのように転換後に残存したかということを明らかにして「歴史の重層」を解明することでもある。
個人研究としては、昭和戦前期から戦後にかけての精神医療を素材として、精神病院の症例誌の分析から、患者と家族の側の思惑と医者の側の対応の相互作用として、精神病院における滞在と具体的な治療を再検討する考察を論文化し、学会報告では、国家の政策としての優生学が、精神病の家系を含む地域社会においてどのように調査の対象となったかをまとめて発表した。
研究の統括としては、1．公衆衛生の形成における疾病の記憶の役割、2. 予防接種における意思決定の構造、3. ハンセン病など、強いスティグマを持ち続けた疾病のケアの近代化、4.植民地医学を通じた日本型の医学の伝播の主題を中心にして、国際的な報告者を100名超で集めた報告会を組織して、当研究課題の大規模な報告会を組織し、それぞれの主題についての報告・ディスカッションを行ない、その成果をウェブ上に掲載した。
平成24年度は、3年におよぶこの研究を総括する年度であったが、日本における「医療の三角形」と「歴史の重層」という新しい視角・方法論を持つ医学史研究を日本において定着し、その研究成果を国際的に発表し、欧米と東アジアを中心とする国際的な研究者の共同体に定着させることができた。これをさらに発展させることが、今後の目標となる。

現在までの達成度 (区分)

理由

24年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

24年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [雑誌論文] Japan’s epoch-making health-insurance reforms, 1937-1945 (2013)
  • 著者名/発表者名: 杉田 米行
  • 雑誌名: Japan Forum 巻: 25(1) ページ: 112-133
  • DOI: DOI:10.1080/09555803.2012.741141
  • 査読あり
• [雑誌論文] ハンセン病史研究のパースペクティヴ―書評へのリプライにかえて― (2013)
  • 著者名/発表者名: 廣川和花
  • 雑誌名: 歴史科学 巻: 211号 ページ: 12～17
• [雑誌論文] 資料翻刻 大鶴正満訪中日誌（１９５７年）（１） (2013)
  • 著者名/発表者名: 飯島渉・本村育恵・井上弘樹・久保田明子・藤野真帆・星加美沙子・森田英太郎
  • 雑誌名: 青山史学 巻: 31号 ページ: 93-130
• [雑誌論文] Psychiatry in the Land of Suicide: Medicalization of Self-killing in Early Twentieth-Century Japan (2013)
  • 著者名/発表者名: 鈴木 晃仁
  • 雑誌名: 日本医史学雑誌 巻: 59巻１号 ページ: 3-15
  • 査読あり
• [雑誌論文] 昭和戦前期精神病院の症例誌について (2013)
  • 著者名/発表者名: 鈴木 晃仁
  • 雑誌名: アーカイブズ学研究 巻: 18 ページ: 未確定
• [雑誌論文] The 1922 Japanese Health Insurance Law: Toward a Corporatist (2012)
  • 著者名/発表者名: 杉田 米行
  • 雑誌名: Harvard Asia Quarterly 巻: XIV, NO. 4 ページ: 36-43
  • 査読あり
• [雑誌論文] Britain as a model for Japan's 'modernization'? Japanese views of contemporary British socio-economic history (2012)
  • 著者名/発表者名: 永島 剛
  • 雑誌名: Twentieth Century British History 巻: Vol.23 no.4 ページ: 555-562
  • 査読あり
• [雑誌論文] 近代日本精神医療史を読み直す (2012)
  • 著者名/発表者名: 橋本 明
  • 雑誌名: 精神医学史研究 巻: VOL.16(1) ページ: 5－9
• [雑誌論文] わが国における精神科ソーシャルワーカーの黎明 (2012)
  • 著者名/発表者名: 橋本 明
  • 雑誌名: 愛知県立大学教育福祉学部論集 巻: No.61 ページ: 113-122
• [雑誌論文] コミュニティのウエルネスを考える―「蚊とハエのいない生活実践運動」を題材に― (2012)
  • 著者名/発表者名: 田中誠二
  • 雑誌名: ウエルネスジャーナル 巻: 9 ページ: 27-32
  • 査読あり
• [雑誌論文] ハンセン病疫学と近代日本の地域社会 (2012)
  • 著者名/発表者名: 廣川和花
  • 雑誌名: 歴史評論 巻: 746号 ページ: 59～75
  • 査読あり
• [雑誌論文] 近代日本の疾病史資料の保存と公開にむけて―ハンセン病資料を素材に (2012)
  • 著者名/発表者名: 廣川和花
  • 雑誌名: 精神医学史研究 巻: 16巻1号 ページ: 41～46
• [学会発表] A Hidden Commonality in “World History” between South Korea, China, and Japan (2012)
  • 著者名/発表者名: 飯島 渉
  • 学会等名: Korean Association for International Studies conference
  • 発表場所: Seoul, Korea
  • 年月日: 20120820-20120821
• [学会発表] Who have responsibility to manage disease; historical experience of the twentieth century in East Asia and contemporary (2012)
  • 著者名/発表者名: 飯島 渉
  • 学会等名: the Fourth International Conference on Sinology
  • 発表場所: Academia Sinica, Taipei(台湾）
  • 年月日: 20120620-20120622
• [学会発表] The Management History of Japanese Domiciliary Nurses in Tokyo Before WWI
  • 著者名/発表者名: 山下 麻衣
  • 学会等名: 第６回アジア医学史学会
  • 発表場所: 慶應義塾大学日吉キャンパス
• [学会発表] The triumphant return of Baron Takaki to London in 1906, as a disciple of British epidemiology
  • 著者名/発表者名: 永島 剛
  • 学会等名: The 7th Anglo-Japanese Conference of Historians
  • 発表場所: Trinity Hall, Cambridge
• [学会発表] Public health sciences and daily life in modern Japan
  • 著者名/発表者名: 永島 剛
  • 学会等名: 第６回アジア医学史学会
  • 発表場所: 慶應義塾大学日吉キャンパス
• [学会発表] 昭和２２年刊「公衆衛生叢書全７輯」について
  • 著者名/発表者名: 渡部幹夫
  • 学会等名: 第１１３回日本医史学会総会
  • 発表場所: 栃木県 獨協医科大学
• [学会発表] 大正１１年制定、昭和２年施行の健康保険法についてー関東大震災と医療体制
  • 著者名/発表者名: 渡部 幹夫
  • 学会等名: 日本医史学会 平成２４年１１月例会
  • 発表場所: 順天堂大学１１号館
  • 招待講演
• [学会発表] Japanische Psychiater "zwischen" den akademischen Zentren der Psychiatrie der westlichen Hemisphäre. Uchimura Yushi (1897-1980) und seine Zeitgenossen
  • 著者名/発表者名: 橋本 明
  • 学会等名: Historische Fachtagung anlässlich des 200-jährigen Jubiläums der psychiatrischen Klinik in Zwiefalten
  • 発表場所: ZfP Südwürttemberg, Zwiefalten (Germany)
• [学会発表] Poverty and Mental Illness: A dream or a nightmare of hospitalization of the mentally ill in modern Japan
  • 著者名/発表者名: 橋本 明
  • 学会等名: British Association for Japanese Studies (BAJS) Conference 2012
  • 発表場所: University of East Anglia (United Kingdom)
• [学会発表] 西欧における精神医学史博物館の社会的な役割について
  • 著者名/発表者名: 橋本 明
  • 学会等名: 第16回日本精神医学史学会
  • 発表場所: 京都大学
• [学会発表] Waterfalls and Hot Springs: The Genealogy and Development of Traditional Japanese Remedies for the Mentally Ill
  • 著者名/発表者名: 橋本 明
  • 学会等名: 第６回アジア医学史学会
  • 発表場所: 慶應義塾大学日吉キャンパス
• [学会発表] 戦後占領期における天然痘の流行と対策
  • 著者名/発表者名: 田中誠二・杉田聡・丸井英二
  • 学会等名: 第113回日本医史学会総会
  • 発表場所: 栃木県 獨協医科大学
• [学会発表] 第二次大戦後の滋賀県彦根市におけるマラリア対策
  • 著者名/発表者名: 田中誠二・杉田聡・丸井英二
  • 学会等名: 第77回日本民族衛生学会総会
  • 発表場所: 東京大学（東京都）
• [学会発表] 戦後占領期における発疹チフスの流行―昭和21年の東京について―
  • 著者名/発表者名: 田中誠二・杉田聡・丸井英二
  • 学会等名: 第71回日本公衆衛生学会総会
  • 発表場所: 山口市民会館（山口県）
• [学会発表] From Rural to Urban Communities: Reconsidering the Epidemiology of Hansen’s Disease in Modern Japan
  • 著者名/発表者名: 廣川和花
  • 学会等名: Japan at Chicago: Medicine, Politics, and Culture in the Japanese Empire
  • 発表場所: The University of Chicago（アメリカ）
  • 招待講演
• [学会発表] Treatment Places and Living Places: The Circumstances of People with Hansen’s Disease in Modern Japan
  • 著者名/発表者名: 廣川和花
  • 学会等名: British Association for Japanese Studies Conference 2012
  • 発表場所: University of East Anglia（イギリス）
• [学会発表] The Linkage of Hansen’s Disease between Pre-modern and Modern, Inside and Outside Japan
  • 著者名/発表者名: 廣川和花
  • 学会等名: 第６回アジア医学史学会
  • 発表場所: 慶應義塾大学日吉キャンパス
• [学会発表] 医学がフィールドにでるとき―戦前・戦中期におけるハンセン病疫学調査と「検診」活動
  • 著者名/発表者名: 廣川和花
  • 学会等名: 病と社会・環境・科学技術に関する近代史研究会（若手研究者研究力強化型プロジェクト）
  • 発表場所: 立命館大学衣笠キャンパス
• [学会発表] フィールドサイエンスと医療政策―1930年代のハンセン病疫学の営み―
  • 著者名/発表者名: 廣川和花
  • 学会等名: 科学コミュニケーション研究会 第28回関西支部勉強会
  • 発表場所: 大阪大学豊中キャンパス
• [学会発表] A Hidden Hygienic Connection between Japan and China;Japanese scientists visiting China in 1957
  • 著者名/発表者名: 飯島 渉
  • 学会等名: Japan at Chicago: Medicine, Politics, and Culture in the Japanese Empire
  • 発表場所: Chicago University(アメリカ）
• [学会発表] A New Golden Age for the Global Vaccine Industry? The Impact of Public Health Policies on the Eclipse or the Dawn of the Therapeutic
  • 著者名/発表者名: ジュリア・ヨング
  • 学会等名: Is This the End? The Eclipse of the Therapeutic Revolution
  • 発表場所: University of Zurich(スイス）
• [学会発表] １９８０年代の米国ワクチン産業：医薬品行政による政策転換
  • 著者名/発表者名: ジュリア・ヨング
  • 学会等名: 日本薬史学会
  • 発表場所: 東京大学(東京）
• [学会発表] A History of Japan’s Vaccine Policies and Production: Lessons from Merck in the 1980s and Beyond
  • 著者名/発表者名: ジュリア・ヨング
  • 学会等名: 第６回アジア医学史学会
  • 発表場所: 慶應義塾大学日吉キャンパス
• [学会発表] Empire, Eugenics and the Psychiatry of Population in Japan 1930-1945
  • 著者名/発表者名: 鈴木 晃仁
  • 学会等名: 第６回アジア医学史学会
  • 発表場所: 慶應義塾大学日吉キャンパス
• [学会発表] Psychiatric Surveys of Peripheral Populations in Japan in the 1930s and 40s
  • 著者名/発表者名: 鈴木 晃仁
  • 学会等名: 精神医学の歴史会議
  • 発表場所: ドイツ、ツィエファルテン
• [学会発表] Psychiatry of a Population: Transformation of Japanese Psychiatry and Psychiatric Surveys in the 1930s and 40s
  • 著者名/発表者名: 鈴木 晃仁
  • 学会等名: Japan at Chicago: Medicine, Politics, and Culture in the Japanese Empire
  • 発表場所: Chicago University(アメリカ）
• [学会発表] 医療をめぐるアーカイブズ
  • 著者名/発表者名: 鈴木 晃仁
  • 学会等名: 日本アーカイブズ学会 2012年度第1回研究集会
  • 発表場所: 神奈川県立公文書館
• [学会発表] 都市の若者と医学教育―適塾を国際的にみる
  • 著者名/発表者名: 鈴木 晃仁
  • 学会等名: 第五回適塾講座
  • 発表場所: 大阪大学
• [学会発表] 周縁・国家・帝国―昭和戦前期における内村祐之のアイヌ・伊豆諸島の精神病調査
  • 著者名/発表者名: 鈴木 晃仁
  • 学会等名: 日本科学史学会第５９回年会
  • 発表場所: 三重大学（津）
• [図書] 「香港における公的医療の史的背景」『東アジアにおける市民社会の形成―人権・平和・共生』第4章 (2013)
  • 著者名/発表者名: 永島剛 （内藤光博編）
  • 総ページ数: 81-105
  • 出版者: 専修大学出版局
• [図書] 「都市ペナルティと都市ルネサンス―一八世紀から一九世紀へ 」『一八世紀イギリスの都市空間を探る―「都市ルネサンス」論再考』第8章 (2012)
  • 著者名/発表者名: 永島剛 （中野忠・道重一郎・唐澤達之編)
  • 総ページ数: 167-187
  • 出版者: 刀水書房
• [図書] “Between Two Psychiatric Regimes: Migration and Psychiatry in Early Twentieth-Century Japan”,in Migration, Ethnicity, and Mental Health: Historical Perspectives, 1840-2010 (2012)
  • 著者名/発表者名: 鈴木 晃仁（Angela McCarthy and Catharine Coleborne）
  • 総ページ数: 141-151
  • 出版者: Routledge
• [備考] Akihito Suzuki’s Website
  • URL: http://user.keio.ac.jp/~aaasuzuki/BDMH/home.htm