研究分担者 |
増田 公明 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 准教授 (40173744)
南 雅代 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 准教授 (90324392)
松崎 浩之 東京大学, 工学系研究科, 准教授 (60313194)
奥野 充 福岡大学, 理学部, 教授 (50309887)
堀内 一穂 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (00344614)
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研究概要 |
本年度は,屋久杉年輪(西暦97年~1551年)について,1年輪の14C測定を進めた.測定が終了した年輪は,602年から1072年である.この結果をIntCa109と比較すると,屋久杉の14C年代はIntCa109が.示す14C年代よりも古い値を示す傾向があることが明らかとなった。これは,これまで歴博などから報告.されてきた結果と同様な傾向である.太陽活動が異常に活発化したときには,太平洋高気圧が強くなり海洋の気団が夏場に日本を広く覆うため,海洋気団の14C濃度の低い大気の寄与が大きく作用するためだと考えられる.日本の複数地点で,このような効果が一般的に見られるか否か,すなわち地理的な効果を調査する必要がある.これについては,単に年輪年代が既知の古い樹木を探すだけではなく,様々な地点から採取される埋没樹木などについて,年輪の14C年代測定を行いIntCa109較正データに対してウイグルマッチングを行ってそのマッチングの有り様を確認することからも研究を進めていく. 14C測定実験室間の比較実験については,共通試料を5つの実験室に配布した.試料は屋久杉年輪で,比較的年輪幅が広い箇所で10カ所の年輪について,同一の年輪試料から10mg×5個の試料に分割して,5カ所の実験室に配布した.最終結果はまだ得られていない. また,青森県各地から様々な樹種の現生年輪を採取し14C濃度測定を行った結果,常緑針葉樹と落葉広葉樹との間に明瞭なオフセットを見出した.このことにより,高精度の暦年代較正データを確立するためには,地域的効果以外にも,こうした樹木の種別効果を考慮しなければならない可能性が指摘できる.この点についても,今後さらに詳しく調べる必要がある. さらに,数多くの年輪試料について安定的に高精度の14C年代を得るために,試料調製方法の最適化に向けて試験を行い,半自動で1mg以下の炭素量の二酸化炭素からグラファイトを効率よく合成するための試料調製装置の開発を進めた.
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