研究課題/領域番号 |
22240082
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中村 俊夫 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 教授 (10135387)
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研究分担者 |
増田 公明 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 准教授 (40173744)
南 雅代 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 准教授 (90324392)
松崎 浩之 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60313194)
奥野 充 福岡大学, 理学部, 教授 (50309887)
堀内 一穂 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (00344614)
小田 寛貴 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 助教 (30293690)
田中 孝幸 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (10414583)
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キーワード | 放射性炭素年代測定 / 暦年代較正 / 樹木年輪 / 加速器質量分析 / 実験室間比較 / 大気14C濃度の地域効果 / 大気14C濃度の経年変化 / 太陽活動 |
研究概要 |
これまでに実施した樹木年輪の14C濃度測定は,奈良県室生寺スギ材からAD1617~AD1739の年輪,また鹿児島県屋久島産の2本の屋久杉からAD1413~AD1615及びAD146~AD1072の年輪を選別し,1年輪ごとに14C濃度を測定した.これらの日本産樹木年輪の14C測定によると,日本産樹木の14C年代は,IntCal09が示す14C年代に対して,AD146~AD1072の年輪で+24.7±30.4 14C年,AD1413~AD1615の年輪で+15.9±22.1 14C年,AD1617~AD1739の年輪で+5.3±24.0 14C年ほど古い年代側へのずれが見られた.日本産樹木とIntCal09間の14C年代のずれは,14C年代のばらつきの範囲内ではあるが,日本産の樹木の方がIntCal09に比べて古い14C年代を示すことが明らかとなった. 既に,大気の循環により局所的な大気中二酸化炭素の径時的な14C濃度変動が起こることがHua and Barbetti (2007)により指摘されている.東アジア周辺は,夏季には太平洋高気圧が発達するため海洋気団の影響を受け,逆に冬季にはシベリア高気圧の発達で大陸気団の影響を受ける.南半球の低緯度からもたらされる海洋気団に影響を受けると,その影響を受けて育つ陸上植物の14C濃度は相対的に低くなる.こうして,夏季に太平洋高気圧が異常に発達する気候が数年~数十年間継続することがあれば,東アジア地域で生育した陸上植物に,14C濃度が相対的に低い期間が発生しうることになる.日本は北緯30度以北にあるが,夏季には熱帯収束帯(ITCZ)の北端境界付近に位置することになり,上記のような影響を受ける可能性がある.これについては,広く日本各地の樹木年輪の14C年代測定を行いデータを蓄積する必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,樹木年輪の14C濃度を測定するための主要機器であるタンデトロン加速器質量分析計が,平成23年8-10月さらに12月に断続的に故障したため,測定利用が進まず研究費の一部を次年度に繰り越した.その後,修理は完了したものの研究自体は予定のとおりには進まなかった.平成24年に入って,機器のトラブルがすくなくなり,年輪の14C濃度測定を進めることが出来た.この間,東京大学にて,加速器質量分析法に関わる国際シンポジウムを開催し(平成23年12月16-18日),樹木年輪の14C濃度測定に関わるテーマについて意見交換を行うことが出来た.また,この科研費研究に関わる研究集会を名古屋大学にて平成24年3月12-13日に開催し,研究の成果を交換し,今後の研究の進め方について意見交換を行った.このように,研究の遅れを取り戻すための方策を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
屋久杉年輪試料(最内年輪:西暦97年,最外年輪:1551年)を用いて,未測定の年輪を更に測定を継続する.また,大気中二酸化炭素の14C濃度の地域依存性を調べるために,北日本にて生育した樹木の年輪の測定を進める.特に,青森県産のアスナロでは,945年から1605年の年輪年代を持つ試料を入手しており,この年輪試料について14C濃度測定を推進する. また最近では,さまざまな年代範囲で14Cウイグルマッチング解析の事例が多い.そこで,14Cウイグルマッチング解析のデータを総合して,IntCal09と日本の年輪試料の14C濃度のずれの比較検討を行う.既に奥野ほか(2012)によると榛名火山の歴史時代の噴火におけるHr-FA, Hr-FPに埋もれた樹木の年輪14Cの解析では,IntCal09較正データを用いると噴火の暦年代が古めに出ており,むしろSHCal04較正データを用いた方が調和的な結果が得られることが示されている.このような視点からの調査検討も進める. 本年度がこの研究計画の最終年度となることから,これまでの研究成果のまとめを行う.研究分担者,研究協力者による研究打合会を開催する計画である.
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