研究課題/領域番号 |
22240091
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小野 公二 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (90122407)
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研究分担者 |
鈴木 実 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (00319724)
櫻井 良憲 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (20273534)
切畑 光統 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (60128767)
田中 浩基 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (70391274)
木梨 友子 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (80252534)
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キーワード | αオートラジオグラフィー / 中性子 / 10B化合物 / ミクロ分布 / 抗腫瘍効果 |
研究概要 |
ホウ素中性子捕捉療法は10B原子核が中性子を捕獲し放出する10ミクロン以下の極短飛程で生物効果の極めて大きいα粒子とLi原子核の殺細胞効果を利用する腫瘍選択的放射線治療であり期待が大きい。しかし、本法の発展のためには未解決の技術要素がある。その核心は10B化合物の開発とそれに絡む基盤技術、特に腫瘍を含む生体組織中での化合物のミクロ分布を正確かつ簡便に把握する画像技術の開発である。そのため、既存のαオートラジオグラフィー技術の改良による高精度化を試みた。10B化合物を投与したマウスの薄切組織をα粒子などの固体検出器CR-39に載せ中性子を照射した。なお、後の画像融合のメルクマールにする線をCR-39上に刻しておいた。次にCR-39上の薄切組織のヘキスト染色蛍光画像を作成し、更にCR-39に化学処理を施してα粒子などが形成した飛跡を表出させた。ただ、10B原子核のミクロ分布の観察には飛跡サイズが細胞径に近い程に大きいため、固体検出器CR-39に斜入して飛跡を残す粒子ではホウ素原子核の位置精度が保証できない。しかし、多数の飛跡の中から正円のものを選択すれば10B原子の位置を特定できることが23年度の研究で分かった。更に固体検出器CR-39に前もって刻した線をメルクマールに飛跡画像と薄切組織の蛍光画像をコンピューター画像技術で融合させる。これによって10B原子核の位置を細胞上で正確に特定する技術が確立できた。BPAやBSHの修飾体の合成も出来ており、その生物活性も腫瘍について検索されているので、24年度には本法で検索できるミクロ分布情報と合わせて効果の包括的理解が可能となると期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の基盤技術である組織内B-10分布の新規解析法の開発に手間取ったためである。具体的には研究の概要で述べた如くホウ素原子核の薄切組織上の位置と放出粒子が検出媒体CR-39上に最長9ミクロンのサイズで形成される飛跡位置との一致精度を極限まで高めるために想定した種々のアイデアが技術的に上手く行かなかったためと、薄切組織画像とCR-39上の飛跡画像を高精度で一致させるための想定アイデアが技術的に上手く行かなかったためである。しかし、新たの発想に基づくアイデアを導入することによって23年度末には何れも解決できた。本法に関する論文を準備中であり、本年度は本法を駆使して研究を進めることが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
(1)開発した高精度αオートラジオグライーによる10B化合物分布の検索とヌードマウス移植ヒト腫瘍に実験的BNCTを行った結果の比較検討によって、BNCTによる選択的治療が期待できる腫瘍種をで明らかにする。肺癌(中皮膿を含む)モデルについては既に研究を始め、中性子による照射研究も行っており継続する。また、浸潤性および表在性膀胱癌(膀胱癌では膀胱へ空気の注入が可能であるので中性子の強度の減弱を大幅に級和できることから、BNCTの対象と考え得る) (2)合成済みの新規ホウ素化合物の分布と効果の特性を現行のBPA、BSHと比較検証する。BSHを含有するPEGイムノリポソーム、温度感受性リポソーム、またポリアルギニン標識の細胞膜透過性BSH製剤の腫瘍ならびに正常組織への移行・集積を高精度αオートラジオグライーで検索すると共にBSHおよびBPAに対する単クローン抗体を使った検索の結果と比救検証する。高精度αオートラジオグライーでは集積したホウ素化合物の濃度の検索も可能であるので濃度推定を試みる。グラム単位の試料でのホウ素濃度の測定は、原子炉中性子を利用する即発ガンマ線分析(設備は設置済み)と1CP(整備済み)を用いて行う。 (3)現在使用可能な棚素化合物(BPAとBSH)の腫瘍選択的集積性の向上を図る手法を検索する。腫瘍血管の正常化を誘導し、抗がん剤などの腫瘍内での分布の不均一を低減すると報告されている抗VEGF抗体薬であるAvastinがホウ素化合物の腫瘍中分布に及ぼす効果を検索する。また、温熱処理が誘導する血流の増加によるホウ素化合物の腫瘍集積性の向上についても検索する。
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