環境発がんリスク評価体系―中皮腫惹起能に関する研究― アスベスト・ナノマテリアル腹腔内投与による初期病変と特異タンパク発現の解析:雌性F344ラットへの酸化チタン3種(P:球形、F100:短繊維、F400:長繊維)、クリソタイル(Chr)、チタン酸カリウム繊維(KT)、シリコンカーバイト繊維(SiC)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)に、超音波による開裂処理を施したクリソタイル2種(短時間および長時間処理)を加えて、腹腔内投与後の経時的なN-ERC変化の観察を行った。特殊な超音波処理によってアスベスト繊維の長さを変えず、繊維をナノサイズに開裂させることに成功した。中皮腫惹起能に対する繊維状粉じんの繊維径がナノサイズとなった場合の影響を、ラット腹腔内投与による腫瘍発生も併せて観察を進めた。 環境発がんリスク評価体系―早期予測指標に関する研究― 中皮腫において、発症前診断・早期病変発見は急務である。簡便な高感度の血液検査による診断法の開発と新規治療法の開発を進めた。ERC 産物は蛋白分解酵素で切断され、C 末 (C-ERC) とN 末 (N-ERC) に別れる。C-ERC は膜表面に残り、中皮細胞に特異的に染色される。一方、N-ERC は細胞外に分泌され、中皮腫患者の血清中に高濃度に検出されるものの、その機能については不明であった。我々は、分泌型N-ERC に細胞死抑制効果があることを見出した。また、N-ERC に結合する蛋白の存在を確認した。早期予測指標であるバイオマーカー機能を持つ遺伝子医薬・抗体治療法の開発を進めた。 本研究は、中皮腫惹起能のある因子による発がんの初期過程の病理学的観察と経時的な血液バイオマーカー変動との相関を見る極めてユニークなものであり、バイオマーカー機能を持つ新規遺伝子医薬・抗体による新規治療法開発に資する。
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