研究課題
本研究では、南極ドームふじより採取された過去72万年間をカバーするアイスコア試料中の宇宙線生成核種10Beおよび36Cl濃度を測定した。平成24年dのは、ドームふじアイスコアを対象に、アイスランドベーズンエクスカーションを網羅する17~20万年前のベリリウム10分析を行った。その結果以下の事実が判明した。1)約18.5~19万年前に明瞭なベリリウム10増大を発見した。2)約1万年、4千年、及び1.8千年の周期的な宇宙線強度変動を見出した。3)このうち約1.8千年の周期変動は、太陽活動変動に由来する可能性が高いことを明らかにした。また、南極ドームふじアイスコアに含まれる空気のO2/N2比を測定し、ドームふじにおける夏期日射量曲線とを対比することにより、気候変動の影響を受けない軌道要素チューニングを行い、正確なコア年代を構築した。さらに、南極ドームふじアイスコアから酸素同位体、イオン、ダスト、微生物の古環境プロキシデータを取得し、データセットを整備した。3年間の測定の結果を総括し、以下の知見を得た。すなわち、南極アイスコア中の10Beの変動は、グローバルなイベントの記録となっていることが証明された。すなわち、アイスコア中の10Beの記録を利用することにより、従来年代指標として広く用いられていた古地磁気記録と相補的に、より信頼性の高い年代指標を確立する道が拓けた。また、アイスコア中の36Clも宇宙線変動の記録として有用であることが分かった。10Beと36Clは生成断面積の宇宙線エネルギー依存性が異なるため、両者の組み合わせにより、宇宙線エネルギースペクトルに関する情報も得られる可能性も予見された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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