研究課題
H22年度の計画に従い、低緯度上部対流圏エアロゾルと巻雲を高精度で測定するため、まず気球搭載OPCとライダーの改修を行った。この結果、OPCは、摂氏200~300度に加熱した大気中でのエアロゾルの粒径ごとの個数を計測可能となった、またライダーは新たに波長1064nmの検出器が追加され、532nmとの二波長でのエアロゾルと巻雲の観測が可能となった。水蒸気の測定に関しては、低湿度における高精度測定が可能な気球搭載鏡面冷却型露点湿度計(CFH)とライマンα計測型湿度計(FLASH)を調達し観測に備えた。観測に先立ち、現地観測所の使用に関して、インドネシア宇宙航空局(LAPAN)と共同研究の取り決めを行った。観測機器を現地に輸送した後、観測キャンペーンは2011年1月6日から1月13日にかけて、インドネシア東部ビアクで実施した。現地到着後、ただちに測定器の立ち上げを行った。観測期間中、停電や一部不調な機器があったが、大部分の測定器は順調に動作し、気球搭載機器は放球した分はすべて地表付近から下部成層圏に到る間の測定に成功した。ライダーは停電時間を除くほぼすべての期間、データを取得した。今期の観測では、昨年末にインドネシア、ジャワ島における火山噴火で大気中に放出された火山性のエアロゾル層が、対流圏界面付近で連続的にライダーにより観測された。このエアロゾル層は加熱OPC測定の結果、大部分は揮発性の物質(おそらく硫酸)であったが一部不揮発性の粒子を内部もしくは外部混合していることが明らかとなった。また、このエアロゾル層内に巻雲が生成する事象が見られたが、二波長ライダー観測によって推定される雲粒子個数濃度はOPCによる揮発性エアロゾル個数濃度より約2桁小さく、巻雲の氷水量は飽和水蒸気量の約10%であることが明らかとなった。これらの結果は熱帯圏界面付近の巻雲の生成とそれに伴う脱水過程の解明に極めて有意義な情報と思われる。
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http://www.stelab.nagoya-u.ac.jp/~tshibata/kibanA.htm