研究課題
本研究の目的は低緯度上部対流圏エアロゾルを、ゴム気球や地上からの遠隔測定を用いた安価かつ自由度の高い方法で観測し、主な特徴を明らかにすることである。さらにその上で、氷雲や水蒸気との関係の解明をめざす。目的達成のため:1)低緯度西太平洋域インドネシアの観測点においてエアロゾルの粒径分布とその高度分布をゴム気球に搭載したOPC(光学粒子計数計)を用いて測定する。同時にライダーを用いてエアロゾルと巻雲の高度分布を測定し、それぞれの高度における代表値を求める。2)組成情報も得られるOPCを利用し、主成分が先行研究で言われているような硫酸水溶液か否かを明らかにする。3)OPCとCFH(気球搭載鏡面冷却型露点湿度計)との同時観測を行い、エアロゾル・巻雲、の情報に加え、湿度の高度分布を得る。4)観測結果に基づく微物理数値モデル実験により熱帯圏界面における極端な水蒸気過飽和の原因を推定する。観測の結果、上記すべての目的のうち、1)、2)、3)それぞれの観測を成功裏に実施することができた。特に平成23年1月に実施した観測では熱帯圏界面高度に火山性の硫酸液滴を主成分とする火山性エロゾル粒子層が存在し、その中で巻雲が生成する様子を観測することができた。OPCやとライダーの観測結果から、エアロゾル粒子と巻雲粒子の個数濃度を比較し、硫酸液滴エアロゾルから巻雲粒子が生成している可能性が極めて小さいことを明らかにした。この結果はこの高度域で卓越する硫酸水溶液エアロゾルが巻雲の氷晶核として有効に働かないことを示しており、この高度域の巻雲が硫酸エアロゾルに比べて個数濃度の小さい不揮発性エアロゾルを核として生成している可能性を示唆している。この条件を巻雲生成の数値モデルに適用すると、大きな過飽和が生じることが確認できた。すなわちこれは目的4)が達成されたことを示す。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Atmospheric Chemistry and Physics Discussion
巻: 13 ページ: 633-688
10.5194/acpd-13-633-2013
Atmospheric Chemistry and Physics
巻: 12 ページ: 25833-25885
10.5194/acpd-12-25833-2012
Geophys. Res. Lett.
DOI:10.1029/2012GL053638
J. Geophys. Res.
巻: 117 ページ: D12207
DOI:10.1029/2011JD017402
http://www.stelab.nagoya-u.ac.jp/~tshibata/kibanA.htm