研究課題
本年度は、主にパタゴニアの白い氷河,ヒマラヤおよびアフリカの黒い氷河において現地調査を行い、氷河生態系、特に微生物活動と氷河の表面構造やアルベドの関係に関する観測と試料採取を行なった。白い氷河の調査は、2013年3月にチリ共和国パタゴニア北氷原の北端にあるエクスプラドレス氷河などにおいて行った。エクスプラドレス氷河では微生物相の高度変化分析用サンプル採取など、氷河生態系に関する観測を行なった。この氷河は近年大きく後退しており、下部の裸氷上にこれまで未報告のコケ植物の群落が分布していることが明らかになった、また昨年度南氷原のチンダル氷河で採取した昆虫(無翅カワゲラ類)サンプルを利用して、消化管微生物の遺伝子解析を行い、耐低温性腸内微生物が含まれていることなどを明らかにすることができた。黒い氷河の調査は、2012年10月にブータンヒマラヤのカンジャラ氷河および、2013年2月にアフリカのウガンダ共和国・ルーエンゾリ山群にあるエレナ氷河で行った。カンジャラ氷河では無翅ユスリカ類などの氷河昆虫も採集することができた。エレナ氷河下部では、黒い汚れの中に、これまでに報告の無い雪氷中で増殖するコケ植物が含まれていることがわかった。現在、以上の調査地で採取した氷河生物サンプル、およびこれまでの調査で採取したサンプルの微生物相解析や遺伝子解析を行っている。同時に、観測データや衛星画像を解析することによって、微生物活動によるアルベド改変モデルの構築、リモートセンシングによる氷河上の汚れや微生物分布解析法の開発を進めている。
2: おおむね順調に進展している
今年度行ったチリ・パタゴニア北氷原の白い氷河での調査、ブータンとウガンダの黒い氷河での調査では、天候などに恵まれたことにより、予定どおり観測や試料採取ができた。また、採取した試料の分析もおおむね順調に進んでいる。
これまでの調査結果から構築しつつある、氷河生態系の微生物活動によるアルベド改変過程モデルを検証するために必要な観測を、主にグリーンランド、ヒマラヤ、パタゴニアの氷河で行う。同時に、氷河生態系情報の空白地域である南極半島やエクアドルでの現地観測を実現するべく努力する。
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すべて 雑誌論文 (17件) (うち査読あり 12件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 4件)
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