研究課題/領域番号 |
22241009
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今須 良一 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (40334255)
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研究分担者 |
田村 正則 産業技術総合研究所, 環境化学技術研究部門, グループ長 (40357489)
陳 亮 産業技術総合研究所, 環境化学技術研究部門, 主任研究員 (70371060)
齋藤 尚子 千葉大学, リモートセンシング研究センター, 助教 (50391107)
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キーワード | 環境評価手法 / 代替フロン / GWP / 温室効果 / 物質輸送モデル / HFE / HFO / PFO |
研究概要 |
オゾン層破壊や地球温暖化の原因物質となるフロン類やその代替物質の全廃や削減が進められる中、代替物質の開発が進められ、それらの物質の地球温暖化ポテンシャル(GWP)の評価結果がIPCCの報告書などに掲載されてきた。本研究は、大気中寿命の短いフロン代替物質などに適用できる新たな地球温暖化影響評価指標を開発することを目的とする。特に、IPCCの第4次報告書に記載された短寿命物質については、物性値等の再測定なども含め、温暖化影響予測値をより信頼度の高いものにすることを目指している。本年度、以下の項目を実施した。 大気中寿命評価: 評価対象物質であるHFE等について、OHラジカルとの反応係数の測定を継続して実施した。実測値はHOMOエネルギーを元に理論計算されたこれまでの値と比較して、数倍程度の違いがあるものもあった。これらの測定された反応係数を用いて、スケーリング法により評価対象物質の大気中寿命を計算し、工業界で一般的に用いられている簡便法に基づいてGWP計算値を求めた。 赤外分光データの測定: 赤外分光データの測定を継続して実施した。特に評価対象物質の全面的な見直しを行い、今後使用の増大が見込まれるハイドロフロオロオレフィン(HFO)17種類、パーフルオロオレフィン(PFO)5種類を新たに評価対象とすることとした。また、背景放射計算に影響するバックグラウンド大気の成分、特に水蒸気の吸収線については、HITRAN2008よりaer_ v3.1へのアップデートが望ましいことが判明し、これへの移行を行った。 3次元物質輸送モデル開発、濃度計算: 3次元輸送モデルの開発に着手し、輸送プロセスの評価指標となるラドンとSF6の輸送計算を実施できるよう改良を行った。放射計算コードについては、水蒸気の連続吸収帯データの取り扱いに優れているMT-CDK2.5に移行する改良を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎となる物性値の測定については、当初予定を超えて、新たな評価対象物質の測定も実施している。一方、モデル開発については、物質輸送モデルの元になる大気モデルのバージョンアップに追いついていない部分があり、その対応が別途必要となっている。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定では、大気大循環モデルをベースとした物質循環モデルをオンライン計算しながら、GWP評価のための放射計算を行う方法を主と考えていた。しかし、計算時間等の問題からオフライン計算、特に雲情報を外部のデータベースを元に内部で計算しない方法が高速であり、その手法による計算を優先的に行うことを検討している。
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