研究課題/領域番号 |
22241009
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今須 良一 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (40334255)
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研究分担者 |
田村 正則 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境化学技術研究部門, 主任研究員 (40357489)
齋藤 尚子 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 助教 (50391107)
陳 亮 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境化学技術研究部門, 主任研究員 (70371060)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 気候変動 / 環境技術 / 気象学 / GWP / 代替フロン / 放射強制力 |
研究概要 |
オゾン層破壊や地球温暖化の原因物質となるフロン類やその代替物質の全廃や削減が進められる中、代替物質の開発が進められ、それらの物質の地球温暖化ポテンシャル(GWP)の評価結果がIPCCの報告書などに掲載されてきた。本研究は、大気中寿命の短いフロン代替物質などに適用できる新たな地球温暖化影響評価指標を開発することを目的とする。特に、IPCCの第4次報告書に記載された短寿命物質については、物性値等の再測定なども含め、温暖化影響予測値をより信頼度の高いものにすることを目指している。本年度、以下の項目を実施した。 ・大気中寿命評価:OHラジカルとの反応係数の測定を継続した。特に、今後、既存の代替物に替わり使用が予想されるHFO類について評価を実施し、GWP値として、20~120という結果を得た。 ・赤外分光データの測定:GWP計算に必要な赤外分光データの測定を継続して実施した。これらの結果を含め、分光データベースへのサンプルデータのアーカイブを開始した。このデータを利用し、国外の研究者が既に論文発表に至る成果を出している(例えば、Hodnebrog et al., 2013)。 ・3次元物質輸送モデル開発、濃度計算:3次元輸送モデルを用いてHFEの濃度分布計算を行うためのモデル開発を継続して実施した。いくつかのHFEについて、雲を含む厳密計算により放射強制力を求めた。その結果、特に大気中寿命の短い物質の放射強制力は、雲の高度や光学的厚さに大きく依存するため、物質の濃度分布を規定するOHラジカルの値の適正化が必要であることが分かった。 ・新指標の考案:空間濃度変動を考慮して求められた放射強制力について、地域影響も考慮した温暖化影響の強さを表す新指標を考案した。特に、単純に放射強制力を全球平均する方法、地域ごとに積算する方法、地域ごとに積算し重み付けして全球平均する方法などについて考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
輸送モデルによる評価対象物質の大気中濃度計算において、発生源分布情報が重要となるが、これまで、既存物質の発生量データベースをスケーリングして用いてきた。しかし、用途によって使用量、大気中放出量が異なることから、新規開発物質の発生予想量としては、必ずしも適した方法ではない。この点は、当初計画の中で、用途が類似したHFEなどの評価物質のみを想定していたことも一因である。この点を改善しないと、現実的な物質の濃度分布予想とならず、GWP計算にも影響を及ぼす。
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今後の研究の推進方策 |
上記問題点を踏まえ、本研究課題においては、評価対象物質の現実的な濃度予想分布を導出することが、それを用いて行うGWP計算結果の信頼性を高める上でも重要となる。そのため、本課題で評価対象としたHFE、HFO、R-32などの物質について、業界団体への調査などにより、用途別の使用予想量を明らかにする。また、人口や電力使用量といった物質放出量の基準となるパラメータについても、基準となる年代の見直しなどを行う。それらを元に、より現実的な発生量予想データベースを構築した上で、濃度予測計算を実施する。
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