研究概要 |
薬剤耐性菌の水圏環境中での発生原因,潜伏場所,移動・拡散などの知見はいまだにないので,本研究では,環境細菌において,薬剤耐性が様々な化学物質によっても誘導され,その形質がヒトの病原細菌にまで侵入・伝播する機構と実態を解明することを目的としている. 初年度では,台湾の台南地域が水銀に汚染され,大きな養鶏場,養殖場が近接することを申請者は予備調査でみいだしているので,この地域を調査フィールドとし,研究過程で,さらに適切な場所がみいだされた場合は加えて検討することとした.現場の汚染状況調査では,抗生物質定性・定量はHPLCおよびLC-Ms/Msを用い,金属分析はICP-Msを用いた.水銀は原子吸光法も併用した.また,備品としてリアルタイムPCRを購入し,現場の薬剤耐性遺伝子の定量を行なった.さらに,現場試料では培養法で耐性率算出を行ない,細菌を分離した. 台湾試料では,オキシテトラサイクリン(OTC)耐性遺伝子tetAと水銀の耐性遺伝子merA両方を持つ菌が見いだされた.ヒトの腸内細菌が多く,これら耐性菌はヒトや家畜に由来する種が環境へ放出されたものであることが示唆された。tetAとmerAは遺伝子タイプの違うものが同じ菌に担われている場合があり,独立的に伝播していると考えられた. また,韓国の南岸,ガーナのラグーンなどが複合汚染の可能性があるため,予備調査を行った.現在遺伝子の定量中である. 当初予定していたマイクロコズムでの群集構造への汚染影響は実施できなかったので,23年度に行なう計画である. ヨーロッパの状況視察と今後の共同研究の打ち合わせをヘルシンキ大と行い,23年度からシングルセルレベルでの遺伝子伝達実験の予備研究を行なう計画を立てた.24年度から本格的に開始する予定である.
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