研究課題
薬剤耐性菌の水圏環境中での発生原因,潜伏場所,移動・拡散などの知見はいまだになく,本研究では,環境細菌の薬剤耐性能が種々の薬剤や化学物質によって誘導され,その形質がヒトの病原細菌にまで侵入・伝播する機構と実態を解明することを目的としている.これまで,1)水銀とテトラサイクリン(TC)耐性遺伝子の共存が見られた.2)バナジウムでTC耐性遺伝子の水平伝播が促進されることが初めて分かり,これはビブリオから大腸菌への伝播ではみられたが,アシネトバクターではみられなかった.3)TCは遮光下の水環境中では60%が30日間で堆積物へ移行し,水中には5-6%が残存した.4)サルファ剤耐性遺伝子のなかで,環境中ではほとんど検出されていないsul3が海水中未培養群集に保有されていることを発見した.4)TCとサルファ剤耐性遺伝子は,汚染がなくなってからも海底堆積物中に10年以上残存していた.本研究の結果から,薬剤以外の化学物質の共存で遺伝子伝播が促進される場合があること,薬剤耐性は薬剤の汚染とは直接相関がない場合が多い事,などが分かった.薬剤・金属等の化学物質への暴露歴が長い環境の場合,細菌は多くの耐性遺伝子を長期に保有し続け,かつ広範な環境に拡散することを示唆する.さらに耐性遺伝子の伝播効率は細菌の組み合わせによって異なることから,日和見感染菌アシネトバクターの場合はリスクは低いと考えられるが,ビブリオと大腸菌の組み合わせのように高い効率でプラスミド伝播が起こる場合もあるため,今後水利用による耐性保有水圏細菌も考慮が必要である.さらに,本研究では初めて海の未培養菌が遺伝子リザーバになっていることが分かったので,今後は培養法依存やメタゲノム解析のみならず,培養法と遺伝子定量を組み合わせたモニタリングによって,環境遺伝子のリスクを評価する必要があることが示唆された.
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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