研究課題
突然変異誘発性を示す発がん物質は遺伝毒性発がん物質と呼ばれ、その作用には閾値が存在しないとして各種の行政的規制が行われている。しかし、ヒトには複数の生体防御機能が備わっており、これらが低用量の遺伝毒性発がん物質の作用を抑制し、事実上の閾値を形成する可能性が考えられる。本研究では、損傷部位の乗り越えDNA合成に関わるDNAポリメラーゼζ(ゼータ)を遺伝的に改変したヒト細胞およびマウスを樹立し、遺伝毒性発がん物質の閾値形成機構について検討することを目的とする。平成25年度は、DNAポリメラーゼζの2781番目のアスパラギン酸をアスパラギンに置換したヒト細胞株(D2781N、この細胞株ではDNAポリメラーゼζのDNA合成活性が減弱している)、2618番目のロイシンをメチオニンに置換した細胞株(L2618M、この細胞株ではDNAポリメラーゼζのDNA合成の忠実度が減少している)を用い、臭素酸カリウムの低用量域における遺伝毒性を野生型細胞と比較した。その結果、DNAポリメラーゼ活性が減弱したD2781Nは、L2618M、野生型細胞よりも高い感受性を示した。この結果は、DNAポリメラーゼζが遺伝毒性発がん物質の閾値形成に重要な役割を果たしていることを示唆している。研究成果は、平成25年7月に韓国で開催された国際トキシコロジー学会(ICT2013)、平成25年11月にブラジルで開催された国際環境変異原学会(11th ICEM)において、遺伝毒性発がん物質の閾値形成機構に関するシンポジウムを開催し発表した。また、DNAポリメラーゼζの2610番目のロイシンをメチオニンに置換したマウス(これはヒト細胞のL2618Mに相当しDNA合成の忠実度が減少している)を、突然変異のレポーターを有するgpt deltaマウスと交配し、理化学研究所バイオリサーチセンターへ寄託した。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (17件) (うち招待講演 4件)
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