研究課題/領域番号 |
22241019
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
平出 正孝 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 教授 (20111833)
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研究分担者 |
齋藤 徹 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (40186945)
松宮 弘明 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 准教授 (10362287)
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キーワード | 環境技術 / 浄化 / 凝集沈殿 / 界面活性剤 / 温度感応性高分子 / アドミセル吸着 / 薬剤 / 環境水 |
研究概要 |
医療活動や日常生活から様々な薬剤成分が環境中に排出され、それらの生態系への影響が深刻な問題となっている。本研究では、申請者らが提案したアドミセル及び温度感応性高分子、並びに関連分離媒体を用いて新しい排水浄化システムを構築し、多種類の薬剤成分を高効率に分離除去することを目的としている。本年度は、まずアドミセルの改良型として考案したアニオン界面活性剤支援凝集沈殿法について系統的に実験を行った。その結果、各種酸性薬剤、中性薬剤、ならびに塩基性薬剤が、迅速かつ高効率に除去できることがわかった。興味深いことに、従来の排水処理技術ではほとんど除去されなかった抗生物質や合成抗菌剤も、効率的に除去できるようになった。さらに研究を、高分子電解質-界面活性剤凝集法へと展開させ、高分子電解質に導入した反応性置換基との結合により、疎水性の低い殺菌剤も効率よく除去できるようにした。なお、加温により凝集する温度感応性高分子媒体に関しては、反応性置換基を高密度に導入したものを合成し、薬剤除去の高効率化・迅速化をはかった。 捕集除去した薬剤の低環境負荷分解については、アドミセル分離媒体(例えばカチオン界面活性剤とシリカゲルから調製)中でβ-ラクタム系抗菌剤や有機リン系農薬の分解がみられ、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)によれば、β-ラクタム環の開裂が示唆された。すなわち、温和な分解により、抗菌性を示す化学構造が消失する可能性が見出された。また、MRIの造影剤として一般に使用されているGd錯体については、吸着・脱着現象を巧みに利用することにより、Gd-フミン錯体との分別定量法が確立できる見通しを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アドミセル、温度感応性高分子、並びに関連分離媒体の排水浄化能力の検討と高機能化は、ほぼ予定通りに進捗しており、従来の排水処理技術では除去が困難であった様々な薬剤成分が分離除去できるようになった。さらに、アドミセル媒体の疎水環境においては、ある種の抗菌剤が自然に分解し、抗菌性の少ない物質に変換されていく現象も見出し、さらなる研究の展開が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後とも、アドミセルや温度感応性高分子、並びに関連分離媒体の更なる高機能化をはかり、多種類の薬剤成分除去の条件設定を行う。また、複数の排水処理技術を融合・連結させ、連続的に稼働する浄化システムを実験室スケールで設計する。分離除去した薬剤成分を低環境負荷で分解させる技術については、別の界面活性剤と固相により調製したアドミセル媒体を用い、分解の効率と生成物、異種薬剤への適用性などについて検討する。さらにGd-錯体の存在形態別分離分析法を確立し、MRI造影剤として用いられているGd錯体の環境での動態把握を試みる。
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