研究課題/領域番号 |
22241029
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
横山 利彦 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 教授 (20200917)
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研究分担者 |
中川 剛志 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 助教 (80353431)
高木 康多 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 助教 (30442982)
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キーワード | キラル / 光電子顕微鏡 / 光電子分光 / レーザー / 円二色性 |
研究概要 |
本研究の目的は、これまでに全く報告のない回折限界を超えた空間分解能でのキラル識別顕微鏡を、紫外自然円二色性光電子顕微鏡法に基づいて開発することである。その根本原理は、通常の吸収過程の円二色性では双極子禁制遷移となり感度が0.1-0.001%程度しか得られないのに対し、光電子放出の角度分解検出では双極子項が相殺されず感度が10%にもなることを利用するもので、これは全く独創的なアイデアである。本研究が成功すれば、これまで空間分解能が光学顕微鏡レベル(1μm程度)で試料の厚みもμmオーダー必要であったものが、一気にナノレベル(数10μm)で単分子層の厚みまで計測可能になると考えられ、革新的なものとなり得る。 22年度末に角度分解能を備えた光電子顕微鏡が納入され、23年度は真空槽の設計・製作・立上げを行った。光電子顕微鏡は十分な空間分解能等の性能が確認できたが、深紫外光の均質な左右円偏光を得ることに手間取った。溶融石英窓が若干の複屈折を呈し左右円偏光度が完全には一致しなかった。窓材をフッ化カルシウムに変更したが、今度は溶接ができないため超高真空での使用が困難であった。独自にo-リングシール窓を作成しやっと利用できるようになった。一方、測定試料においては、キラル有機薄膜ではTi:Sapphireレーザー4倍波で試料劣化が観測され、また、光エネルギー(最大6eV)が小さ過ぎ最高占有準位からの光電子を観測しにくいことがわかった。金属的な表面キラル化学種の円二色性に試料対象を変更して測定を行い始めた段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
キラル有機化合物の薄膜を中心に深紫外レーザーによる光電子の観測を試みていたが、使用しているTi:Sapphireレーザーでは光エネルギーがやや小さくHOMO準位に届きにくい。そのため金属的な表面キラル化学種の円二色性に試料対象を変更した。また、市販の溶融石英窓では左右円偏光度が同一にならず、フッ化カルシウム窓を用いることとした。フッ化カルシウム窓は溶接ができず超高真空に不向きであり、独自の工夫が必要であった。これらの方針変更に時間を要したため、現在までの達成度としては、やや遅れていると判定した。
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今後の研究の推進方策 |
キラル有機化合物薄膜に関する上記問題は金属的な表面キラル化学種を作成することで解決できると考える。現在試料作成、測定準備を行っている。溶融石英窓の問題は、o-リングシールのフッ化カルシウム窓を作成することで解決した。本研究期間の終了まで1年であり、十分研究遂行可能であると考える。
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