研究課題/領域番号 |
22241030
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
中山 知信 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究者 (30354343)
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研究分担者 |
新ヶ谷 義隆 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノ機能集積ユニット, MANA研究者 (40354344)
徐 建勲 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANAリサーチアソシエイト (40534798)
久保 理 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノ機能集積ユニット, MANA研究者 (70370301)
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キーワード | 多探針走査プローブ顕微鏡 / 神経細胞計測技術 / 神経細胞模倣人工無機構造 / 単分子識別検出ナノプローブ / 増強ラマン散乱分光 / カーボンナノホーン凝集体 / チューニングフォークセンサー / イオン伝導計測 |
研究概要 |
本研究では、我々が保有する多探針走査プローブ顕微鏡技術と高機能ナノプローブ技術を駆使して神経細胞網の刺激と応答、すなわち信号伝達を計測する手法の確立と、神経細胞網を模倣した人工無機構造の構築を目指している。平成23年度は、前年度にAFM化された多探針走査プローブ顕微鏡のさらなる改良を進めて、刺激・応答計測に備えるだけでなく、神経細胞模倣の人工無機構造に関連して大きな進展があった。特に、その形状が神経細胞の樹状突起と類似するカーボンナノホーン(CNHs)凝集体に金属化合物を内包させ、光や熱によるエネルギー付与を行うと、金属原子がCNHsの外側に凝集するという現象を発見した。透過電子顕微鏡によれば、この金属化合物の分解と金属原子の凝集の過程では、金属原子がCNH間を移動するほどの拡散が起こっている可能性がある。この特徴を利用すれば、CNHs凝集体からなるネットワーク型伝導材料に学習効果を持たせ得ると考え、フォトリソグラフィーを用いて用意した2つの金属電極間をこのネットワーク型伝導材料によって架橋する材料調整法を開発した。具体的には、電気泳動法を用いて、目的の金属電極周辺に溶媒中に分散しているCNHs凝集体を集めた。その後、光の照射に応じて、CNHs凝集体ネットワーク全体の電気抵抗が小さくなること、その変化量は光の波長に応じて変化することなどを見出した。しかしながら、このネットワーク型伝導材料には、光照射条件を変化させても、基本的には電気抵抗が小さくなるのみで、逆反応が生じなかった。そこで、我々は、CNHs凝集体同士の接点の伝導性を優先的に制御するために、ジュール熱の利用を試みた。予備的な実験では、電流量の制御によって、全体の電気抵抗が減少する条件と逆に増大する条件が存在することを確認し、このような電気抵抗の増減は繰り返し行う事が可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
重要な技術として、3年計画でプロトタイプ化を進めようと計画した多探針走査プローブ顕微鏡に関しては、ほぼ必要なプロトタイプ技術が完成し、2年目にして概ね計画した内容を終わらせている。そのため、複数のプローブの位置決め精度を高めるだけではなく、この作業がより一般の研究者にも利用しやすくなるように、計画には無かった走査電子顕微鏡装置への組み込みを開始した。細胞計測に関しては、細胞を適切に取り扱うための人員確保が困難となり、基本的な技術の確立のみを行なっている。特に予想外の進展を見せているのが、人工無機構造による神経模倣材料の開発である。当初想定した方式での学習効果発現は困難であったが、より簡便で効果的な手法を発見し、神経を模倣した機能を持つ材料の開発へと進展しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、神経模倣型人工無機構造の構築とその機能制御のメカニズムを重視して研究を推進する。特に、カーボンナノホーンを用いた神経模倣型ネットワーク材料は、比較的簡便な手法でスケールアップでき、その機能には学習効果が認められるため、大変興味深い。生きた細胞を利用した計測研究は、予想以上に時間とマンパワーが必要な実験となり、研究代表者の判断で、必要とされる技術の開発に注力することとした。具体的には、単分子識別検出ナノプローブの最適化とそれを用いた顕微手法をマルチプローブへ組み込むための技術開発である。これが完成させた上で効率的な計測研究を再開したい。
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