研究概要 |
コンパクトなX線1分子追跡法(Diffracted X-ray Tracking : DXT)を確立させるために検出器系としてPILATUS 100K (RIGAKU)を導入した。PILATUS 100KはX線検出用に開発されたピクセルアレイ検出であり、通常のCCDカメラと比べてX線の検出効率(8keV, 99%)と高いダイナミックレンジ(20bit)を持っている。PILATUS 100Kを高エネルギー加速器研究機構のPF-AR, NW14AビームラインでDXT計測により検出器の評価を行った。X線は18keVにピークを持つX線エネルギー幅がΔE/E=15%、繰返し周波数が794kHzのX線源を用いた。X線のスポットサイズはサンプル表面上で450×100μm^2に調節した。検出器以外はこれまでのDXTと変えずに、通常高速CCDが設置されている自動ステージの上に固さを調節し、そのまま設置した。PILATUS 100Kのピクセルサイズは172×172μm^2で487×487pixels(受光面積:83.8×33.5mm^2)となっており、これまで用いた高速CCDより受光面積が小さいのでX線のダイレクトビームを除いた同心円の半分のX線回折像のみ動画観測を行った。サンプルは2種類用意し評価を行った。粘着フィルム上に散布した金ナノ結晶50nm~200nmを評価サンプルとして、金ナノ結晶(50nm~200nm)をラベルしたapoPYPタンパク質を基板に固定したサンプルを実験サンプルとし、それぞれのサンプルの金ナノ結晶からのX線回折像を取得した。X線露光時間は36ms/frameとした。これまで主に用いてきた高速CCDカメラ(C4880-10,浜松ホトニクス)と比べてS/N比が5~10倍以上改善された。また低角側には通常基板や空気からの散乱があり通常高速CCDカメラではS/N比は落ちる。対照的にPILATUS 100KはX線エネルギーの閾値を決めることでエネルギーの低いX線をカットすることができる。そのためバックグラウンドのノイズが大幅に軽減されたことにより全体的にS/N比が向上した。またバックグラウンドのX線散乱をカットすることが出来るので、カメラ長を長くして角度分解を向上することが可能である。X線露光時間は9ms/frameに設定し、X線アブソーバーを外したカウントを上げた。S/N比と受光面積を下げることなく時間分解能10ms以下のX線1分子計測が可能になった。
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