本予算によって作製された全反射ミラーの設置方法がルーチン化し、12時間程度あればセッテングが完了し、X線1分子追跡計測(Diffracted X-ray Tracking; DXT)が可能なセットアップが終了することができる。これで現状でナノ結晶50-70nmのサイズでタンパク質1分子の運動計測をビデオレイト(1枚の画像を積算する時間が30ms)の連続2秒間測定がルーチン的にできるようになった。この研究成果の意味は、世界のどこの放射光施設においても、ベンデングマグネット方式のビームラインにおいて、後付のX線集光系を付加すれば、ビデオレイトDXT測定が十分可能であることを証明したことになる。本H24年度から本格的なDXTを行い、今まで利用してきたSPring-8のBL40XUとの比較も定量的に行うことが出き、それをまとめて論文投稿しほぼ受理された(計測方法専門誌であるReview of Scientific Instrumentationに)。演題は、Diffracted X-ray tracking (DXT) for monitoring intramolecular motion in individual protein molecules。特に、BL40XUと本開発でDXT測定が可能となったBL28B2とでX線入射スペクトルが異なることによるバイオサンプルへのダメージ効果が定量化できることがわかった。これは極めて重要なデータになるので、定量化を急いでいる。基本的にBL28b2は、入射X線のエネルギーバンドパス(⊿E/E)が82%で、BL40XUの12%の7倍以上も白色性が含有されており、非常に大きな分子内運動を回折斑点として追跡できる利点を持ち合わせているが、欠点としてサンプルに関係のないX線波長を常時照射していることになる。
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