本年度は研究目標のうち、細胞への力刺激のためのMEMSカンチレバーを用いた3軸力センサの設計・製作を行い、性能を評価した。センサの形状として中心にカンチレバーを1本配置し、カンチレバーの片側の端から左右に3本ずつ梁を伸ばした構造となっている。カンチレバーはSOI(Silicon on Insulator)基板上で製作され、カンチレバーの表面及び梁の側面にピエゾ抵抗層を形成することで、3方向の歪みを同時に検出可能となるよう設計した。カンチレバーの表面の抵抗値の変化でカンチレバーの上下の変位を計測し、梁の側面の抵抗値の変化でカンチレバーの前後左右の変位を計測することができる。設計としてカンチレバーの長さを1.2mm、厚さを15μmとした。またカンチレバーを端で支える2本の梁の幅を15μm、長さを15μmとした。このときカンチレバーの各方向へのバネ定数はそれぞれ1.0~10N/m程度になるように設計した。また、3軸力センサのピエゾ抵抗を形成しているビームにおいて、ノッチ構造をつくり、ノッチ部分にピエゾ抵抗を形成することで、応力集中による感度向上を実現した。カンチレバーに対して各方向から力を加えることで、力と抵抗変化率の関係を評価した。その結果、カンチレバーの上下、左右、前後方向に対して、計測レンジ0~10μNにおいて、0.4μN、0.05μN、0.2μNの分解能で3軸の力をそれぞれ計測できることを示した。さらに、1軸のカンチレバーで液体の粘性変化を計測できることを示した。 なお、MEMSカンチレバーには力の計測に用いる3軸に対応したピエゾ抵抗と、プロセスの過程で形成され、各軸ピエゾ抵抗をつなぐ寄生的なピエゾ抵抗が存在している。この寄生抵抗の存在のため、ピエゾ抵抗に複数軸同時に電圧を印加すると、ヒエゾ抵抗間に寄生抵抗を通じて電流が漏れるというクロストークの問題があった。そのため、3つのピエゾ抵抗に対し時分割スイッチング(10kHz)で各軸独立に電圧印加し、実質的に3つの抵抗変化を同時計測できるよう回路を製作した。
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