研究課題/領域番号 |
22241033
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
下山 勲 東京大学, 情報理工学系研究科, 教授 (60154332)
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キーワード | MEMS / 3軸力センサ / ピエゾ抵抗型カンチレバー |
研究概要 |
平成23年度は、ピエゾ抵抗型MEMSカンチレバーの感度を向上させるための幾何的形状の改善と、不純物拡散層の解析に取り組んだ。カンチレバーの板厚を薄くすることで、バネ定数は下がり、力入力に対する感度が向上する。これまで、われわれが製作した最も薄いカンチレバーの厚みは300nmであったが、さらにスケールを小さくし、50nmの厚さのカンチレバーを試作した。厚さが1/6となったので、力入力に対するたわみ量の感度が、単純計算で約200倍に向上したことに相当する。ただし、この形状に対して、これまで採用していた不純物ドーピング方法を用いると、カンチレバーの全ボリュームに対してピエゾ抵抗層が構成されてしまう。そのため、カンチレバー表面と裏面の歪による抵抗変化が相殺してしまい、信号を取り出せない。そこで、ファーネスにおける拡散条件を変えることで、ドーピング深さを浅くすることに取り組んだ。ドーピング条件を変えたシリコンウェハの深さ方向ドーピング濃度をSIM(Secondary Ionmicroprobe Mass Spectroscopy)法で解析したところ、拡散温度935℃、拡散時間1秒の条件下で、37nm厚のピエゾ抵抗層を形成可能であることを確認した。カンチレバーの深さ方向の中央に中立線があると考えると、わずかに中立線よりも深い場所までイオンが届いているものの、シリコン表面近傍に局所化した濃度勾配を実現することができた。 また、もうひとつの課題として、MEMSカンチレバーの光応答性についても取り組んだ。メインのカンチレバーの横に、同じ構成のピエゾ抵抗素子を製作し、両者の差分を取ることで光に対する応答をキャンセルすることができることを確認した。また、力計測に必要な場所以外のピエゾ抵抗層を金属マスクして電気的に短絡・遮光し、励起光が照射することの影響が少なくなるように試みた。また、ドープ層を作ったシリコン基板のIV特性を評価することにより、光応答の原因が当初考えていたPN接合によるフォトダイオードの起電力によるものではなく、キャリアの増加によるドープ層の抵抗率の減少によるものとの解析結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目標としていた項目に対して、問題なく研究を進められているので、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、細胞への適用を進めていくため、MEMSカンチレバーを液体中で操作することが必要となる。水中環境がもたらす電気回路へのノイズなどのアーチファクトについて注意しつつ研究に取り組む予定である。
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