研究課題
平成24年度は、カンチレバー三次元形状の工夫とともに、培養した細胞への適用をはかった。まず、カンチレバーの三次元形状の工夫については、すでに実現していた三次元MEMSカンチレバーをベースに改良を加えた。これまでの構造では、x、y、z軸のそれぞれの力信号を計測する際に、各抵抗値をスイッチング回路で切り替えながら読み取る必要があったため、計測可能な信号の帯域幅に制約があり、スイッチングノイズが発生していた。そこで、それぞれの軸に対応した抵抗のグランドを共通する配置とすることで、切り替えを不要とした。さらに、応力が集中するノッチ部分にピエゾ抵抗を形成することで、力感度の向上をはかった。これらの処置により、ノイズレベルを抑えて80μNのレンジを1μN以下のレゾリューションで計測可能となった。次に、培養細胞への適用という点については、MEMSカンチレバーを構成したシリコン基板上への長時間培養を行うことで適応性評価を行った。カンチレバーをそのまま培養液中につけると、電気的に短絡してしまうので、生体適合性を有するパリレンフィルムで表面をコートし絶縁性を確保した。なお、今回は評価のために一軸方向にのみ感度を有するカンチレバーセンサを用いた。カンチレバーセンサ表面は、細胞接着のために細胞培養前にフィブロネクチンでコートした。この結果、センサ基板表面でフィブロブラスト細胞が問題なく長時間培養できることを確認した。また、培養時間1時間、実験時間30分の計1時間30分程度の力計測実験の結果、細胞の移動にともなう力とみられる3μN程度の力を計測できた。以上により、当初目的としていた、カンチレバーの三次元形状の改善と、培養細胞への適用について取り組み、提案センサが細胞計測への適用性を有することを確認した。
2: おおむね順調に進展している
当初目標としていた項目に対し、問題なく研究を進められている。順調に進展していると判断できる。
今後は、細胞の発する力を、さらに力分解能よく計測するためのセンサの改善を行う。また、細胞のマニピュレーションなどにより、カンチレバーの感度が高い位置に高確率で細胞が位置するような措置を検討する。
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Journal of Micromechanics and Microengineering
巻: vol.23, no.3, (article no.035027)
10.1088/0960-1317/23/3/035027
巻: 23 ページ: 045015
doi:10.1088/0960-1317/23/4/045015
http://www.leopard.t.u-tokyo.ac.jp/