初期胚におけるmRNA局在機構について 1)2細胞期の後側に局在するpos-1 mRNAについては、これまでに局在に必要なシス配列とトランス因子を見出してきたが、これに加え、mRNA分解に関わるCCR4-NOT複合体の因子であるlet-711とccf-1がこの局在化に必要であることを見出した。 2)pos-1とは逆に2細胞期前側に局在するmex-3 mRNAの局在化機構についても新たな知見を得た。シス配列については、3'-UTR上の179塩基の領域が局在化に必要十分であり、この中の線虫近縁種で保存されている35塩基部分が重要であることを見出した。MEX-3タンパク質自体も前側への局在が見られるが、この必要十分部分を欠くと新生MEX-3タンパク質の局在化も見られなくなることから、mRNA局在化がタンパク質局在化に重要な働きをすることを示唆した。トランス因子については少なくともCCCHタイプZINCフィンガーを持つRNA結合タンパク質であるMEX-5が受精後の初期胚で働いていることを明らかにした。MEX-5タンパク質は上記35塩基配列に特異的に結合することも確認でき、in situハイブリダイゼーションシグナル強度などからmRNA分解からの保護の方向の働きをしていると考えられた。MEX-5はmex-3 mRNAと同じく前側に局在するが、これは極性決定因子par-1の働きによる。また、MEX-3タンパク質は後極側の細胞運命を決定する転写因子PAL-1の発現を抑えることが知られている。以上のことから、初期胚極性を決めるpar-1によりMEX-5が前側に局在し、前側のmex-3 mRNAを保護し前側でのMEX-3タンパク質の局在を推進する。この結果、PAL-1の前側での働きが抑制され、前後の細胞運命の違いにつながっていくというモデルを構築した。 また、遺伝子発現データベースを活用した内外の共同研究を推進した。
|