研究課題/領域番号 |
22241048
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
鈴木 治和 独立行政法人理化学研究所, LSA要素技術開発グループ, プロジェクトディレクター (80333293)
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研究分担者 |
糸原 重美 独立行政法人理化学研究所, 行動遺伝学技術開発チーム, チームリーダー (60252524)
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キーワード | トランスクリプトーム / プロモーター / 視床 / トランスジェニックマウス / 回路遺伝学 |
研究概要 |
本研究は、特異的プロモーター同定の革新的技術である「ライフサイエンスアクセラレーター(LSA)」と、回路遺伝学の技術連携で、「脳における任意の神経細胞機能をノックダウンする基盤技術(パイプライン)」を構築し、同定した標的脳領域に特異的なプロモーターを用いて同領域を機能解析する。まず、昨年度確立した微量RNA調製法により得た脳の対象領域由来RNAを用いて、小スケールのnanoCAGE法を試みたが、十分に定量性のあるデータを得ることができなかった。そこで、同じ領域から独立した3つの試料を解析すること当面あきらめ、各領域からできる限り多くのRNAを合わせ集めて(数百ng-数ug)、定量性の高いHeliscope CAGEによる解析を行った。その結果、視床網様核、不確帯をはじめ背側視床、室傍核、尾状核被殻において有意な発現があり、かつ、対照である大脳皮質および各標的間において特異性が高いCAGEタグ(プロモーター)をリストアップすることができた。これらプロモーターの中には既存の公共データで特異性が示されていたプロモーターも含まれており、解析結果の妥当性を裏付けた。また、既存の遺伝子モデルに対応しないnon-coding RNAに対応するプロモーターも含まれている。これらのデータから、すでに価値が明確な2つのプロモーターについてはCreトランスジェニックマウス作成の準備にかかっている。さらに、in situ hybridizationでの確認実験のため、データからさらに選別したプロモーターリストの作成を急いでいる。上記の試みと並行して、Allen Brain Atlasから選択された遺伝子について5'RACEにて、プロモーターの位置確認と特異性の再確認を行う実験も行った。優先度が高いトップ20の遺伝子について解析した結果、既存の主要プロモーターからの転写は確認されたが、これと活性において匹敵し、特異性の異なる第2のプロモーターは見つからなかった。しかしながら、上記in situでの確認実験のために選択すべきプロモーターの基準作成に有用な情報を与えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最大の難点は、特異性が非常に高い領域特異的プロモーターを微量のRNAから信頼性高く同定できるのかという点であった。これについてnanoCAGEでの解析に早期に見切りをつけ、biological replicatesを取ることを当面あきらめ、RNAをできる限り寄せ集めて定量性の高いHeliscope CAGEで解析することにより、成功を収めた。以降に技術的障害はないため、今後、一定の成果が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
得られたデータから、すでに有用性が十分に期待できる特異的プロモーターを用いて、Creトランスジェニックマウス作成の準備に取り掛かっている。今後この取り組みに精力を注ぐ。また、得られたプロモーターデーターにはbiological replicatesがないため、有用性が示唆されるプロモーターについてはin situ hybridizationでの検証実験をおこない、視床の分子解剖学的論文へつなげてゆきたい。
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