研究概要 |
野生化ヤギ駆除後の土壌中の栄養元素量と環境要因との関係を解析した。その結果、土壌中の窒素量は、海鳥の営巣の有無、ヤギ駆除前の植生の退行の程度と現存植生の種構成と関係した一方で、土壌中のリンの量は、海鳥の営巣の有無、ヤギ駆除前の植生の退行の程度と地形と関係したことが明らかになった。 海鳥の営巣環境の種間差を明らかにするため,繁殖地の植生調査を行った。その結果、オナガミズナギドリ,カツオドリではシバ草地が,クロアシアホウドリではその他のイネ科草地が好まれていた.また、海鳥の体が大きいと、植生が倭小化,枯死する傾向があり,踏圧の影響が大きいことがわかった。 媒島のノヤギ駆除前・駆除中・駆除後および最新の空中写真を詳細な地形情報(東京都、2009)に基づき幾何補正し、過去の土地被覆状況と現地調査データとの関連性を調べた。結果、一度ノヤギにより裸地化した場所は、表土の垂直方向の流出による深掘れの影響で植生が回復しにくい一方、有効体リン酸塩等の濃度にはばらつきが見られ、過去の海鳥の営巣による影響や、土壌栄養塩濃度による植生の種組成の違いも確認できた。西島における植生変遷も解析中である。 小笠原諸島・父島、母島、兄島、媒島、西島、鳥島から40種の植物の葉をサンプリングし(n=4~45)、植物体内におけるN,P,K,Ca,Mg含量を測定した。その結果、約半分の植物種で高Mg含量と判断された。これは、高Mg含量の地質に由来する高Mg環境によるものであり、種によっては何らかのメカニズムで適応していることが推察された。 昨年度までに開発した数理モデルを用いて、島の生態系から外来ヤギとネズミを駆除するシミュレーションを行った。その結果、ヤギとネズミは同時に駆除した方が生態系の回復が促進されること、ネズミに対する駆除努力が不足していたり、駆除努力を途中で中止したりすると、絶滅してしまう在来種の種数が多くなる可能性が示唆された。
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