研究課題/領域番号 |
22242009
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
阿部 泰郎 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (60193009)
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研究分担者 |
落合 俊典 国際仏教学大学院大学, 仏教学研究科, 教授 (10123431)
牧野 淳司 明治大学, 文学部, 准教授 (10453961)
松尾 恒一 国立歴史民俗博物館, 研究部, 教授 (50286671)
岡田 荘司 國學院大學, 神道文化学部, 教授 (60146735)
上島 享 京都府立大学, 文学部, 准教授 (60285244)
稲葉 伸道 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (70135276)
末木 文美士 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (90114511)
近本 謙介 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (90278870)
伊藤 聡 茨城大学, 人文学部, 教授 (90344829)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 宗教テクスト / 寺院経蔵 / 目録 / 聖教 / 儀礼テクスト / 図像 / 真福寺大須文庫 / 人文学アーカイヴス |
研究概要 |
平成24年度は、研究代表者の著作として『中世日本の宗教テクスト体系』を刊行し、本研究の中心課題である中世の宗教テクストの領域が形成する範疇の構造体系を、聖徳太子伝と絵伝・寺院経蔵と聖教・宗教儀礼とテクスト・神祇祭祀とテクストについて、諸位相の関係性についての解釈を提示した。更に、これらを統合する表象を明らかにした。本書により、学界および一般読者に広く本研究の展開と達成ないし可能性を示した。 本研究の基盤となる寺院経蔵・聖教の復原的調査研究については、真福寺大須文庫について、断簡整理とデータベース化を進めると共に、これまでの復原研究の成果として、栄西の新出著作『改偏教主決』と聖教紙背自筆消息を中心とした、中世禅籍叢刊1『栄西集』を刊行し、貴重資料を学界に提供することができた。更に、文庫全体については、これまでの調査研究の成果を綜合し広く社会に還元するため、全分担遮・連携研究者が参加する真福寺大須文庫調査研究会および名古屋大学文学研究科が、名古屋市博物館と共催して「大須観音展」を開催、図録『大須観音』を共同で執筆し、代表者が監修して公刊した。また講演会・シンポジウム・公開講座などを全員でつとめ、成果の社会への普及に貢献した。勧修寺大経蔵聖教については、重文指定の為の目録点検作業が進捗した。 研究成果の学会発表については、各研究分担者(近本・上島・松尾)が代表者をつとめる科研共同研究の国際研究集会と連携し、相互に参加して報告を行い、翻訳・資料作成等により学術交流に貢献し成果を共有した。代表者は第57回国際東方学者会議の「願文の日中比較」シンポジウムで報告し、また仏教文学会平成24年度大会で和歌・唱導と宗教テクストについて講演した。更に全WG・ST合同で名古屋大学において公開研究集会「中世の音楽と音声」を開催、宗教テクストの先端的課題について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度に刊行した研究代表者の著作(単著)『中世日本の宗教テクスト体系』によって、本研究の中心的課題の体系的な把握と分析の結果を、これまでに本研究の前身研究で行ってきた調査の成果と共に綜合して提出できた。これは本研究の最終報告に相当する。更に「大須観音展」開催と『大須観音』図録刊行等により、研究成果の社会への発信と還元が実現した。また、『栄西集』の刊行により「中世禅籍叢刊」の公刊事業も軌道に乗り、基礎的なテクスト研究の成果も着実に提出できている。 特に、人文学諸分野の先端的な研究成果を総合し、国際的な日本宗教研究の進展を加速し、あらたな研究課題の設定と新領域の地平を目指すという点については、主要な分担者がそれぞれに研究代表者をつとめる科研と連携し、交互に海外・国内で国際研究集会を開催している。特に今年度は、米国ハーバード大学で「日本仏教研究の領域複合的解明の試み」を実現し、本研究に参加する主要研究者が一堂に会し、米国の日本文化研究者と宗教テクストの諸問題について実質的な議論が行われたことは、研究課題と成果の国際的な学術界への認知という点で、大きく進展を見たといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
著作において提出した体系構想について、宗教テクスト調査研究の更なる成果をふまえた一層の理論的高度化を目指す。その中心的基盤となる大須文庫については、収蔵庫の改修・移管を機に、その全点資料について点検目録となる一覧表を作成したが、これを基礎として本格的な悉皆調査と断簡を含むデータベース化の計画を作成する必要があり、残された期間で、その態勢作りにつとめたい。また、予想以上に進展した研究成果の社会発信と研究の国際的な連携についても、更に新たな計画が企てられており、次年度には米国イリノイ大学での東アジア全体を視野に入れた儀礼芸能の研究集会とワークショップ、最終年度には欧州日本学会で研究成果をパネル報告し、ワークショップを開催する予定である。 これらを綜合した、宗教テクスト学の研究拠点形成を目標として、諸分野の宗教テクストに関連する資史料を伝来・保存するアーカイヴスと、それを調査・研究する研究者の相互連携と研究情報交流を目的とする、「人文学アーカイヴス・リサーチ・ネットワーク」計画を構想し、これを新規大型研究課題として提案することを目指す。
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