研究課題/領域番号 |
22242021
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
平川 南 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (90156654)
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研究分担者 |
犬飼 隆 愛知県立大学, 日本文化学部, 教授 (20122997)
小倉 慈司 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (20581101)
仁藤 敦史 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (30218234)
李 成市 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30242374)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 文字文化 / 出土文字資料 / 東アジア史 / 国際情報交換(中国・韓国) |
研究概要 |
本研究課題の最大の眼目は、上記のような古代文字資料についての資料単位の調査実績を踏まえ、東アジア諸国、とくに中国・韓国そして日本における文字資料の比較検討を経て、文字文化の伝播の実態と古代日本における文字文化の全体像を描くことである。 本年度は、3年目の中間報告として、研究者のみならず広く市民を対象とした歴博国際シンポジウム「古代日本と古代朝鮮の文字文化交流」を開催した。歴博での研究会では、シンポジウムで発表される城山山城木簡と高麗沈没船木簡を8月に調査するにあたっての予備調査を行い、メンバーによる意見交換を行った。 シンポジウムでは、韓国国立中央博物館・韓国国立文化財研究所の協力のもと、韓国の考古学・古代史を牽引する研究者からの報告を得た。これらの報告およびシンポジウムでは、韓国における古代木簡の最新成果が公表されたとともに、古代から中世にかけての日韓の文字文化交流の一端を明らかにすることができた。両日とも多数の参加者から意見・質問が出され、古代文字文化に対する関心の深さがうかがわれた。 国内調査にも重点を置いた。福岡県の出土文字資料では、科研メンバーだけではなく九州地方の古代史研究者が多く参加し、調査後の検討会において活発に意見交換が行われた。調査対象とした太宰府市国分松本遺跡・福岡市元岡遺跡群は、福岡県北部に位置し、古代朝鮮からの文化の窓口となった地域である。これらの遺跡から出土した木簡は7世紀後半代のもので、古代国家の諸制度形成を考える上で重要な資料であると位置づけられる。前年度の久留米市・小郡市における資料調査に続き、福岡県内の主要な遺物を網羅的に調査することができた。なお繰り越し分については、岩手県胆沢城出土漆紙文書調査、奈良・東大寺正倉院の構造調査、名古屋市博物館における古代文字資料に関わる特別展の見学などを実施することで、国内の古代文字資料に関する知見を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、文字資料の実物調査に基づく調査研究を主眼としている。 今年度までに、日本国内の主要な古代出土文字資料の調査を行ってきた。特に、日本への文字文化伝播の過程を考える上で重要な7世紀代の資料に主眼を置き、飛鳥藤原地域の木簡や、古代における大陸・朝鮮半島との窓口となっていた九州地方の主だった出土文字資料を実見調査することができた。実見調査では、資料調査に続けて、それぞれの発掘調査担当者や地元の研究者を交えて調査所見の整理と意見交換を行った。 また、国外調査では韓国の主だった資料調査および遺跡調査を完了している(百済木簡、新羅木簡、高麗沈没船木簡・竹札、古代朝鮮の主要石碑など)。さらに中国湖南省長沙走馬楼呉簡の調査を行い、古代中国・古代朝鮮・古代日本三国の文字文化のあり方についての概要を把握できた。これらの調査成果は、調査後の研究会において広く科研メンバーに意見を求めるとともに、論文・学会報告などの形で公開している。 そして、平成24年度には本研究課題の中間報告として、シンポジウム「古代日本と古代朝鮮の文字文化交流」を開催した。本シンポジウムでは、古代日本と古代朝鮮の文字文化交流について、今までの調査研究成果を広く公開することを目的とした。シンポジウム報告では、日本の研究者のみならず韓国の出土文字資料研究者を招き、古代文字文化交流について多角度から議論を深めることができた。 また、出土文字資料の写真データ化作業もおおむね終了し、公開に向けて進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に行ったシンポジウムの成果を本として刊行する。 また、引き続き、日本だけでなく韓国・中国の文字資料についても可能な限り調査研究を行う(中国調査については、先方の事情を考慮しつつ進めていく)。 また、最終年度における国立歴史民俗博物館における企画展示に向け、今までの調査研究の成果をまとめていくことを目指す。同時に、各地の資料調査・研究会を継続して行い、さらなる文字文化の形成過程解明に迫っていく。これらの成果は、現在進めている出土文字資料の写真データベース公開とともに、個々の研究論文や報告で発表していく。
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