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2013 年度 実績報告書

関係性及び連携と連帯に着目した新たな行政観の構築可能性とその具体像に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 22243003
研究機関北海道大学

研究代表者

亘理 格  北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (30125695)

研究分担者 大貫 裕之  中央大学, 大学院法務研究科, 教授 (10169021)
米丸 恒治  神戸大学, 大学院法学研究科, 教授 (00202408)
山下 竜一  北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (60239994)
徳田 博人  琉球大学, 法文学部, 教授 (50242798)
前田 雅子  関西学院大学, 法学部, 教授 (90248196)
豊島 明子  南山大学, 大学院法務研究科, 教授 (10293680)
横山 壽一  金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (10200916)
小川 一茂  神戸学院大学, 法学部, 准教授 (70388768)
北見 宏介  名城大学, 法学部, 准教授 (10455595)
米田 雅宏  北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (00377376)
浦中 千佳央  京都産業大学, 法学部, 准教授 (30633284)
研究期間 (年度) 2010-04-01 – 2015-03-31
キーワード連携 / 連帯 / 公私協働 / 共同利益 / 個別行政法 / 行政法一般理論
研究概要

今年度は、各論的分野相互間の関係性に着目した検討を継続的に進める一方、関係性の視点が行政法一般理論に及ぼすインパクトがいかなるものであるかを明らかにすることを主眼とした。
まず、一般公益と個別的権利利益の間に第3の利益類型としての共同利益を想定するという視点から、共同利益概念の実益、共同利益について権利性を認めるためのロジック、共同利益の制度化としての参加と団体訴訟について制度設計のあり方を論じることにより、共同利益論が、環境や景観のように「公」と「私」が交錯し相互関係性を有する分野に適合的であることを明らかにした。
次に、都市計画法と自然的・文化的遺産保護法との関係性という点で、フランスでは、都市計画による独自規制を通して自然遺産や文化遺産の実効的保護が可能であること、埋蔵遺跡の発掘に伴う損失補償問題を通して、所有権保護に手厚い欧州人権裁判所判例との整合性が課題となっていることを明らかにした。また、行刑施設の管理運営について、フランスでは、公役務の委託管理方式を通して国と民間事業者との間で緊密な連携による公私協働が行われていることが明らかとなった。
社会保障法の分野では、生活保護受給者の増大に対応する形で、就労を強化する方向での生活保護法の改正や生活困窮者自立支援法の制定が行われる状況の下で、従来から若者等への就労支援策を強化してきたドイツの法制度と運用の経験が貴重な示唆を与えることが明らかになった。
さらに、個別行政法と行政法一般理論との関係性に着目し、両者の連携を探るための試みとして、『重要判例とともに読み解く個別行政法』を共編著により公刊した。この試みを通して、個別行政法と行政法一般理論間で相互に影響を及ぼし合う関係の存在が明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

まちづくりと環境保護については、権利・利益の新たな類型化及び社会実態としての利益類型から権利への認定方法の考察を通して、原告適格論、参加論、団体訴訟論等の具体的な制度設計に展開する見通しを得ることができた。
警察法については、日独実定警察法が規律する、警察と行政機関の任務配分準則を明らかにすることを通して、両機関の連携・協働とその限界を探る見通しが得られた。
社会保障法については、生活保護の保護基準や就労支援の面で先進的実績を残してきたドイツの法制度と運用の経験が、わが国の同問題の解決にとっても示唆的であることを明らかにすることができた。
情報法については、特にドイツにおける情報社会基盤法制についての調査研究を進めることができ、さらにEUレベルでの新たな認証・信頼サービス法制の整備動向を把握することを通して、来るべき規則成立への見通しを得ることができた。
以上のような各論分野の研究成果の蓄積を通して、行政法一般理論のあり方に新たな方向性を示すための手がかりが得られた。

今後の研究の推進方策

来年度は本研究計画の最終年度に当たるため、今年度に引き続き、関係性及び連携や連帯に着目した視点が、行政法の基礎概念や一般理論に及ぼすインパクトについて、分野ごとの検討を踏まえた方向性を一層明確に示すための研究及びまとめの作業を以下のように行う必要がある。
まず、まちづくり及び環境保護を現時点での本研究計画の先行分野として位置づけ、行政法の基礎概念や一般理論との架橋を図るための理論的な整理作業を実施する。そのために、今年度まで継続的に知見交流と討議を行ってきたフランスの環境法・都市法の専門家との間で、特に理論面に重点化された知見交換と討議を実施する。
警察法の分野では、警察と行政機関の連携・協働が要請される現実の必要性と実定警察法が前提とする規範的条件とを対比させることにより、両機関の連携・協働が可能なのか、又どこまで可能なのかについて、執行機関としての警察の組織法的位置づけを踏まえつつ具体的に提示する。
社会保障法の分野では、生活保護における保護基準や就労支援の面で先進的な実績を示してきたドイツの代表的研究者をお招きし、日独で共通する当該問題に関する議論を通して問題解決の糸口を探る。
情報法の分野では、前述の新EU電子認証・信頼規則の修正後の可決成立が見込まれることから、同規則成立と並行して、行政法一般理論への方法論的な示唆をまとめ上げることとする。

  • 研究成果

    (46件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (37件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 図書 (3件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] ロー・クラス ダイアローグ行政法(第23回)行政救済(その4)国家賠償法1条2014

    • 著者名/発表者名
      大貫裕之
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 709号 ページ: 54―60

  • [雑誌論文] ロー・クラス ダイアローグ行政法(第24回)行政救済(その5)国家賠償法2条2014

    • 著者名/発表者名
      大貫裕之
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 710号 ページ: 49―56

  • [雑誌論文] ロー・クラス ダイアローグ行政法(第25回・最終回)行政救済(その6)損失補償2014

    • 著者名/発表者名
      大貫裕之
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 711号 ページ: 91―98

  • [雑誌論文] 第2部 公法関係2014

    • 著者名/発表者名
      田原睦夫・大貫裕之
    • 雑誌名

      田原睦夫【編著】『裁判・立法・実務』(有斐閣)

      巻: ―― ページ: 95―178

  • [雑誌論文] 個人情報保護の制度と訴訟2014

    • 著者名/発表者名
      豊島明子
    • 雑誌名

      岡田正則・榊原秀訓・白藤博行・人見剛・本多滝夫・山下竜一・山田洋【編】『現代行政法講座IV 自治体争訟・情報公開争訟』(法律文化社)

      巻: ―― ページ: 229―254

  • [雑誌論文] 社会保障をめぐる対抗2014

    • 著者名/発表者名
      横山壽一
    • 雑誌名

      月刊 国民医療

      巻: 312号 ページ: 4―8

  • [雑誌論文] 過疎地域を内包する自治体における公共交通体系の選択2014

    • 著者名/発表者名
      武田公子・小熊仁・西村茂・横山壽一
    • 雑誌名

      金沢大学経済論集

      巻: 34巻2号 ページ: 155―188

  • [雑誌論文] 情報公開争訟の諸問題2014

    • 著者名/発表者名
      米田雅宏
    • 雑誌名

      岡田正則・榊原秀訓・白藤博行・人見剛・本多滝夫・山下竜一・山田洋【編】『現代行政法講座IV 自治体争訟・情報公開争訟』(法律文化社)

      巻: ―― ページ: 195―227

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 警察学の未来、フランスの視座から2014

    • 著者名/発表者名
      浦中千佳央
    • 雑誌名

      警察政策

      巻: 16巻 ページ: 77―99

  • [雑誌論文] 共同利益論と「権利」認定の方法2013

    • 著者名/発表者名
      亘理格
    • 雑誌名

      民商法雑誌

      巻: 148巻6号 ページ: 513―550

  • [雑誌論文] ロー・クラス ダイアローグ行政法(第14回)法行為・事実行為 : 行政指導への助走2013

    • 著者名/発表者名
      大貫裕之
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 700号 ページ: 57―63

  • [雑誌論文] ロー・クラス ダイアローグ行政法(第15回)行政指導2013

    • 著者名/発表者名
      大貫裕之
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 701号 ページ: 58―64

  • [雑誌論文] ロー・クラス ダイアローグ行政法(第16回)行政手続(その1)2013

    • 著者名/発表者名
      大貫裕之
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 702号 ページ: 42―49

  • [雑誌論文] ロー・クラス ダイアローグ行政法(第17回)行政手続(その2)2013

    • 著者名/発表者名
      大貫裕之
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 703号 ページ: 74―80

  • [雑誌論文] ロー・クラス ダイアローグ行政法(第18回)行政上の義務の履行確保(その1)2013

    • 著者名/発表者名
      大貫裕之
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 704号 ページ: 43―49

  • [雑誌論文] ロー・クラス ダイアローグ行政法(第19回)行政上の義務の履行確保(その2)および、行政救済総説2013

    • 著者名/発表者名
      大貫裕之
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 705号 ページ: 51―57

  • [雑誌論文] ロー・クラス ダイアローグ行政法(第20回)行政救済(その1)2013

    • 著者名/発表者名
      大貫裕之
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 706号 ページ: 47―53

  • [雑誌論文] ロー・クラス ダイアローグ行政法(第21回)行政救済(その2)2013

    • 著者名/発表者名
      大貫裕之
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 707号 ページ: 57―63

  • [雑誌論文] ロー・クラス ダイアローグ行政法(第22回)行政救済(その3)2013

    • 著者名/発表者名
      大貫裕之
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 708号 ページ: 57―64

  • [雑誌論文] 第1章 行政は誰が行うか2013

    • 著者名/発表者名
      大貫裕之
    • 雑誌名

      石川敏行・藤原静雄・大貫裕之・大久保規子・下井康史『はじめての行政法〔第3版〕』(有斐閣)

      巻: ―― ページ: 15―32

  • [雑誌論文] 第2章 行政法の基本的な考え方2013

    • 著者名/発表者名
      大貫裕之
    • 雑誌名

      石川敏行・藤原静雄・大貫裕之・大久保規子・下井康史『はじめての行政法〔第3版〕』(有斐閣)

      巻: ―― ページ: 33―64

  • [雑誌論文] 第4章 行政活動を実現する手段2013

    • 著者名/発表者名
      大貫裕之
    • 雑誌名

      石川敏行・藤原静雄・大貫裕之・大久保規子・下井康史『はじめての行政法〔第3版〕』(有斐閣)

      巻: ―― ページ: 129―149

  • [雑誌論文] ドイツDe-Mailサービス法の概要とEUへの波及―安全で信頼性ある次世代通信基盤法制へ向かう独欧―2013

    • 著者名/発表者名
      米丸恒治
    • 雑誌名

      日本データ通信

      巻: 190号 ページ: 18―24

  • [雑誌論文] 電子認証(eID)の導入動向―欧州とドイツ2013

    • 著者名/発表者名
      米丸恒治
    • 雑誌名

      多賀谷一照・松本恒雄【編集代表】『情報ネットワークの法律実務』(第一法規)

      巻: ―― ページ: 加除式

    • 査読あり
  • [雑誌論文] マンション建設と行政指導 最高裁昭和60年7月16日第三小法廷判決2013

    • 著者名/発表者名
      山下竜一
    • 雑誌名

      磯部力・小幡純子・斎藤誠【編】『別冊ジュリスト・地方自治判例百選〔第4版〕』(有斐閣)

      巻: 215号 ページ: 72―73

  • [雑誌論文] 特定の医薬品をネット販売できる権利(地位)が確認された事例2013

    • 著者名/発表者名
      山下竜一
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 700号 ページ: 129―129

  • [雑誌論文] 水俣病の認定の申請を棄却する処分に関して原告の請求が認められた事例2013

    • 著者名/発表者名
      山下竜一
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 704号 ページ: 111―111

  • [雑誌論文] 鳥羽志勢広域連合が締結した契約に関する住民訴訟2013

    • 著者名/発表者名
      山下竜一
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 708号 ページ: 119―119

  • [雑誌論文] 第7章 社会福祉2013

    • 著者名/発表者名
      前田雅子
    • 雑誌名

      加藤智章・菊池馨実・倉田聡・前田雅子『社会保障法〔第5版〕』(有斐閣)

      巻: ―― ページ: 256―358

  • [雑誌論文] 第8章 公的扶助2013

    • 著者名/発表者名
      前田雅子
    • 雑誌名

      加藤智章・菊池馨実・倉田聡・前田雅子『社会保障法〔第5版〕』(有斐閣)

      巻: ―― ページ: 359―408

  • [雑誌論文] 第10章 社会保障・医事法2013

    • 著者名/発表者名
      前田雅子
    • 雑誌名

      亘理格・北村喜宣【編著】『重要判例とともに読み解く 個別行政法』(有斐閣)

      巻: ―― ページ: 379―436

  • [雑誌論文] 障害者・生活困窮者―自立支援の対象と公法2013

    • 著者名/発表者名
      前田雅子
    • 雑誌名

      公法研究

      巻: 75号 ページ: 204―215

  • [雑誌論文] 市場化・営利化とセットの社会保障制度改革推進法2013

    • 著者名/発表者名
      横山壽一
    • 雑誌名

      月刊 保団連

      巻: 1118号 ページ: 33―38

  • [雑誌論文] 社会保障の変質・解体の「ススメ」―社会保障制度改革国民会議「報告書」の危険な内容―2013

    • 著者名/発表者名
      横山壽一
    • 雑誌名

      月刊 国民医療

      巻: 310号 ページ: 2―8

  • [雑誌論文] 学会回顧2013 行政法2013

    • 著者名/発表者名
      大田直史・石塚武志・小川一茂・南川和宣
    • 雑誌名

      法律時報

      巻: 85巻13号 ページ: 25―34

  • [雑誌論文] 市街化調整区域において許容される開発行為(1)――兵庫県稲美町の「田園集落まちづくり計画」を素材に――2013

    • 著者名/発表者名
      小川一茂
    • 雑誌名

      神戸学院法学

      巻: 42巻3・4号 ページ: 207―226

  • [雑誌論文] 埋立承認処分取消訴訟の訴えの利益2013

    • 著者名/発表者名
      北見宏介
    • 雑誌名

      法学セミナー臨時増刊「新・判例解説Watch」

      巻: 12号 ページ: 77―80

  • [学会発表] 持続可能な地域社会と国・自治体の法的責任

    • 著者名/発表者名
      山下竜一
    • 学会等名
      民主主義科学者協会法律部会2013年度学術総会
    • 発表場所
      神奈川大学(横浜市)
  • [学会発表] 刑事罰與行政罰界限問題

    • 著者名/発表者名
      北見宏介
    • 学会等名
      「行政罰與刑事罰界限問題之探討」学術研討会
    • 発表場所
      真理大学法律学系(淡水市・台湾)
    • 招待講演
  • [学会発表] 従日本法的新発展論刑事罰與行政罰界限問題

    • 著者名/発表者名
      北見宏介
    • 学会等名
      「区辨刑事不法或行政不法本質」国際学術研討会
    • 発表場所
      高雄大学法学院(高雄市・台湾)
    • 招待講演
  • [学会発表] 警察学の現状と未来 フランス警察学を通して、日本への示唆

    • 著者名/発表者名
      浦中千佳央
    • 学会等名
      警察政策学会フォーラム「社会安全政策論と警察学の今後」
    • 発表場所
      グランドアーク半蔵門(東京都)
    • 招待講演
  • [図書] 現代行政法講座IV 自治体争訟・情報公開争訟2014

    • 著者名/発表者名
      岡田正則・榊原秀訓・白藤博行・人見剛・本多滝夫・山下竜一・山田洋【編】
    • 総ページ数
      416
    • 出版者
      日本評論社
  • [図書] 重要判例とともに読み解く 個別行政法2013

    • 著者名/発表者名
      亘理格・北村喜宣【編著】
    • 総ページ数
      487
    • 出版者
      有斐閣
  • [図書] 皆保険を揺るがす「医療改革」―「自助」論やTPPがもたらすもの2013

    • 著者名/発表者名
      横山壽一【編著】日本医療総合研究所【監修】
    • 総ページ数
      302
    • 出版者
      新日本出版社
  • [備考] 金沢大学経済論集

    • URL

      http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspace/bitstream/2297/36851/1/AA12393824-34-2-155-188.pdf

  • [備考] 神戸学院法学

    • URL

      http://www.law.kobegakuin.ac.jp/~jura/law/files/42-3_4-09.pdf

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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