研究課題/領域番号 |
22243011
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宮本 太郎 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00229890)
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研究分担者 |
坪郷 實 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (20118061)
山口 二郎 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70143352)
篠田 徹 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (60196392)
山崎 幹根 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 教授 (30295373)
空井 護 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10242067)
田村 哲樹 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30313985)
田中 拓道 一橋大学, 社会(科)学研究科, 准教授 (20333586)
井手 英策 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (80337188)
吉田 徹 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 准教授 (60431300)
城下 賢一 立命館大学, 文学部, 講師 (70402948)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 政治学 / 比較政治 / 民主主義 / 利益集団 / 集団政治 / 社会保障改革 / 税制改革 |
研究概要 |
研究計画3年目の本年は、24年度交付申請書に記したように、「団体調査などレジーム変容の分析をさらに深化させると同時に、北欧やイギリスにおけるレジーム変容との比較をすすめ、また政党や地方自治体などの動向を明らかにしていく」ことを課題としていた。 まず団体調査を集約する会議は、11月28日と3月13日に東京にて開催した。それぞれの回にゲストスピーカーとして伊藤光利関西大学教授、三浦まり上智大学教授を招き議論をすすめた。 国際比較を深化させる企画として、11月17日に北海道大学にてシンポジウム「諸外国における社会保障改革 福祉レジームの新しいかたち」を開催した。イギリス(一圓光彌関西大学教授)、フランス(加藤智章北海道大学教授)、ドイツ(松本勝明北海道大学教授、土田武史早稲田大学教授)、スウェーデン(宮本太郎研究代表者)について、近年のレジーム変容をめぐる報告と討論をおこなった。11月20日には、コペンハーゲンビジネススクールのオッヴェ・カイ・ペダション教授を招いた国際シンポジウムを開催した。労働市場の流動化と生涯教育政策の連携についての「モビケーション」概念をめぐり、日本における動向について関連省庁からの報告も交えて討論を深めた。 政党の動向については、8月31日に、シンポジウム「政策決定プロセスを検証する 政権交代から3年」を開催した。予算編成・税制(上川龍之進大阪大学准教授)、労働・社会保障政策(三浦まり上智大学教授、宮本太郎研究代表者)、地域主権改革(北村亘大阪大学准教授)の各政策分野について、わが国におけるレジーム変容と政策転換を検討した。 地域や自治体における動向をめぐっては7月23日に北海道大学でワークショップ「社会的包摂の地域的展開」を開催し、自治体が就労支援にいかに関与しつつあるかを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、当初の研究計画において大きく3つの研究目標を掲げている。第一に、日本を中心に比較論的な視点を交えて、福祉・雇用レジームの変容を精査することである。第二に、こうした福祉・雇用レジームの転換に対応する各団体や政党の戦略転換を分析し、また各団体と福祉・雇用レジームの新しい関係を分析することである。そして第三に、以上の二点を総合しながら、新しい福祉・雇用レジームと諸集団の関係がいかなるものになるか、新しいアソシエーション民主主義の可能性を探ることである。 第一の課題については、この3年間に多くの国際シンポジウムや現地調査をとおして、各国の福祉・雇用レジームの変容を明らかにしてきた。各国の動向については、財政的な制約のなかで、保育や積極的労働市場政策などの支援型のサービスに力点を置く政策体系への収斂傾向が見られる。この点においては、「社会保障・税の一体改革」を推進する日本も例外ではない。 このような変容をふまえた第二の課題、すなわち各団体や政党の政策動向分析については、分担研究者が担当分野ごとにリサーチをすすめると同時に、蓄積された知見を総合する会議を重ねてきた。労働組合やNPOなどには、こうしたレジーム変容をふまえて政策や制度要求、組織戦略を転換していこうとする動向が窺える。医師会も新しい医療供給体制への模索を開始している。ただし各団体の政策動向についてはさらに分析を深める必要があるし、とくに各団体の戦略転換がレジームのあり方にいかにフィードバックしているかは、まだ十分に掘り下げられているとは言えない。 そして第三の課題である新しいアソシエーション民主主義の展望についても、多様なビジョンを整理する段階に留まっている。集積した知見やデータとつきあわせながら、統合的なビジョンにまとめあげる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度にあたる平成25年度の研究は、申請時の調書に記したように1)調査結果を総合化し検証するワークショップとシンポジウム、2)総合・補足調査、3)執筆準備会議を軸にすすめる。加えて、「現在までの達成度」に示した課題の達成状況をふまえて、諸団体の政策・戦略転換とレジーム変容との関係や、レジーム変容をふまえた新しいアソシエーション民主主義の展望についての検討を深めていく。 まず第一の柱として、調査結果を総合化するための国際会議、シンポジウムを開催する。9月にはイギリスの政治学者を招いて、レジーム変容のなかのデモクラシーと市民参加のあり方をめぐってのシンポジウムをおこない、とくに政党政治という次元で、福祉政治が直面する新たな課題と展望を示す。ここでは併せて、新しいアソシエーション民主主義のビジョンを模索したい。さらに11月以降、欧州の比較政治研究者をゲストに、日本の福祉雇用レジームの転換と団体戦略についての国際会議をおこなう。この会議では、各国の労組、市民団体の団体戦略とレジーム変容の関連を掘り下げる。 第二の柱となる総合・補足調査と第三の柱の執筆準備会議は、相互に連携させて進行させる。最終報告書と出版企画における執筆テーマも確定しつつあり、「現在までの達成度」も念頭においてそれぞれの内容に沿った補足調査をすすめつつ、報告書の内容を調整していく。 日本型レジームの再編過程で欧州と同様に浮上している社会的包摂という課題については、NPO、労働組合、さらに医師会などの諸団体の政策にも取り入れられつつある。地域における社会的包摂が諸団体の連携でいかにすすめられているか、社会的包摂の先駆的な取組がなされている地域の調査を補足的にすすめたい。
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