本研究の目的は、敗戦後の日本の国交正常化や賠償問題について、国際的に創出された「政府間和解」の枠組を基礎的記録により見直すことにある。その際、1.賠償や請求権等の争点が、どのように和解や償いといった問題と結び付いていたのか、2.歴史問題が噴出する過程は、政府間和解のあり方とどのように関連しているか、3.持続と定着を妨げた要因は何かを探る、という3点の追及を下位目的としている。 本年度は、3名の若手研究者による「研究作業チーム」により、外務省公開の賠償関係資料の収集と整理(外務省の賠償関係記録の収集と関係業績の収集)、日本の和解政策に対するアジア現地の反応に関する研究状況の把握に努めた(とくに韓国、南アジア、台湾、中国。ただし、中国については、日中国交正常化に関する記録の公開が遅れたため、2011年度となる)。 研究分担者の佐藤は、アジア賠償の前提となる引揚げの実態について調査分析を進めるとともに、外務省が公開した東南アジア諸国の賠償関係記録、日本・フィリピン、日本・ビルマ、日本・インドネシアの個別の平和条約関係記録の収集と分析、成果の一部とりまとめに努めた。 以上を踏まえ、研究代表者の波多野は、賠償問題を迂回した経済開発支援(コロンボ計画)に関する学会発表、外務省の公開記録に基づき、安保条約改定問題の一部として和解問題をとりあげた著書を刊行した。また、佐藤は、日本政治学会において研究報告(「引揚と情報」)を行ったほか、2本の関連論文を発表した。
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