研究課題/領域番号 |
22243022
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中林 真幸 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (60302676)
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キーワード | 経済史 / 経営史 / 企業理論 / 産業組織 / 比較制度分析 |
研究概要 |
全体の概要 中林真幸が責任者を務める実証分析班においては、製鉄企業の内部労働市場の分析を進める中林、機械製造企業の人事制度の分析を進める大湾秀雄、労働市場におけるマッチングと内部労働市場の相互作用の分析を進める瀧井克也をはじめとして、顕著な前進を見ることができた。一方、石黒真吾が責任者を務める理論分析班においても、企業組織変化の動学的分析に取り組む石黒、経営者の指導力の組織経済学的構造を分析する石田潤一郎、組織内における経営者と労働者の意思伝達の効率性を分析する清水崇をはじめとして、大きな前進が達成された。 研究会の開催 連携研究者の接近法が多様な本計画においては研究成果を定期的に持ち寄り、また、多様な外部研究者の知見を吸収することが死活的に重要である。学期中には大阪大学大学院経済学研究科において毎回2名の報告者を立てる月例研究会が、夏春の長期休暇中には東京大学社会科学研究所において2日間の国際会議が、「制度と組織の経済学」研究会として開催された。研究会の開催日程および報告者の選定は前年度末から年度初において確定、ホームページ上に公示されており(https://sites.google.com/site/theoeio/)、計画性と透明性、公開性を十分に担保しつつ、研究計画を進めている。 研究代表者担当部分の実績概要 計画全体を代表して中林の実績概要について述べておく。製鐵企業の内部労働市場を分析する中林は、具体的には、1930-1960年代の製鉄業ににおける人的資本投資の変遷に関する分析を進める傍ら、企業側が労働者の能力を学習しつつ、同時に労働者に企業特殊的な人的資本投資を促すという、内部労働市場一般に通じる特質の分析を進め、年度初めに想定した以上の成果を上げることができた。これらの成果は主要な海外学会において発表されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
全体の達成度 実証分析班においては、第一次構築作業を終えたデータの分析を進めつつ、学会等における研究発表を通じて参加者から得られる知見を活かしてデータの改善と分析の深化に努めることが計画の主たる内容であった。実証分析班が扱うデータはいずれも日本企業のそれであり、分析の方法も、一般的な経済学的含意への配慮と、日本企業の特殊性への注目を両立させることに腐心した。そうした、国際的な文脈においては個性的な材料と接近を用いたことにも助けられ、特に国際学会において有益な助言を得ることができた。理論分析班においては、理論的な省察を深めることそのものが研究の作業であった。申請当初から理論的生産性の高い者を計画に加えた代表者の期待に十二分に応える成果が得られたことは言うまでもないが、連携研究者が国際的な活動を強化したことは研究の進捗を加速させることになった。 成果の共有 上記の個別成果を年度内のさらなる進捗、および次年度の進捗につなげていくためには、代表者と連携研究者の密な交流によって補完性を維持することが欠かせない。その意味で、計画的に開催される「制度と組織の経済学」研究会は、単なる経過報告の場にとどまらず、研究の生産性を底上げする重要な役割を果たした。 研究代表者担当部分の達成度 研究計画全体を代表して研究代表者担当部分の達成度を概括しておく。前年度までの中林の達成はデータの構築と精錬を主としていた。その成果は今年度、米国労働経済学会(Society of Labor Economists)年次大会をはじめとする国際学会において報告されたが、その際に、理論的な分析の深化に有益な多くの助言を得ることができた。それを繁栄させつつ、理論的な分析を改善したことが、本年度の達成において重要な意味を持ったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
全体の推進方策 実証分析班は既存データの分析を完了(中林、大湾、瀧井)する。理論分析班は個別研究の中間的な成果をまとめつつ、実証分析班との共同研究を進める。また、実証分析班と理論分析班との共同作業の実質的な進展に合わせて、実証分析班メンバーと理論分析班メンバーの双方を含む数名単位のユニットを構成し、具体的な論文作成作業に入る。 中間成果の公表 個別作業の中間成果が引き続き公表される一方,実証分析班と理論分析班の成員から成る各単位の中間成果もまとまり次第、公表される。 研究会議の開催日程 残り2年度の研究取り纏めに向けて、中間的な成果を相互に交換するとともに、関連する外部研究者との議論を深めることはますます重要となる。平成25年度の「制度と組織の経済学」研究会は日程、報告者ともすべて確定され、公示されている(https://sites.google.com/site/theoeio/)。研究会議についても、例年同様、若壮年の研究者を主体としつつ、海外の指導的な研究者を招聘することが確定している。これまでも、「制度と組織の経済学」東京会議における海外研究者の招聘を期に、研究組織構成者との共同研究に発展する副産物も得られてきたが、平成25年度においても、研究組織構成者との補完性が高い研究者の招聘が確定しており、同様の加速効果が期待される。 研究代表者担当部分の推進方策 研究組織を代表して研究代表者の推進方策をやや具体的に述べておく。既に構築、精錬された製鉄企業データは賃金、学歴はもとより、職位や前職等の豊かな情報を含むが、過年度までの分析においては、その情報のすべてが利用されていたわけではない。分析対象の系列を拡張した新たな論文の作成に着手することが平成25年度の主たる課題であると考えている。
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